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善意の2億5000万円はどこへ消えた――赤い羽根募金“使途不明金”でイオンも協力見送り

赤い羽根共同募金の約2億5000万円使途不明金問題を扱う記事ヘッダー画像

善意で集められた約2億5000万円は、いったいどこへ消えたのか。

2026年10月1日、80回目となる「赤い羽根共同募金」が全国で始まった。

本来なら、地域福祉や障害者支援、災害支援などに使われる“善意の浄財”が集まる季節だ。

しかし今年は、募金運動のスタートそのものが異様な空気に包まれている。

北海道共同募金会で、赤い羽根共同募金などの寄付金約2億5000万円が使途不明になっていることが発覚したからだ。

この問題を受け、40年以上協力してきたイオンが今年度の協力を見送った。

政府も、例年閣僚が胸につけていた「赤い羽根」の着用を今年は控えるようにした。

木原官房長官は、「善意を踏みにじり、募金活動に対する信頼を大きく損なう事案」と厳しく批判した。

問題は、単に金が消えたことだけではない。

会計責任者だった元事務局長1人に、通帳も印鑑も管理が集中していた。

2020年ごろから無断で現金を引き出していた疑い。

不足を隠すために金融機関から借入。

理事会の承認がない議事録まで作成したとされる。

そして何年も、外部監査でも見抜けなかった。

これは「一人の不正」で片づけていい問題なのか。

赤い羽根募金の信頼そのものを揺るがす、大きな事件になっている。

最初に発覚したのは1億8000万円

問題が表面化したのは2026年6月。

北海道共同募金会は、赤い羽根共同募金などの寄付金のうち、およそ1億8000万円が使途不明になっていると発表した。

会計責任者を兼ねていた男性事務局長(58)が、2020年ごろから数年間にわたり寄付金を着服していた可能性があるとみられた。

発覚のきっかけは、通常の内部監査ではなかった。

札幌国税局が2026年2月、元事務局長に対する所得税法違反の疑いで査察に入ったことだった。

つまり、組織内部で自力発見したわけではない。

外部の強制調査によって、初めて巨大な穴が見つかった。

通帳も印鑑も「1人」で管理

特に問題視されているのが、ずさんな会計管理だ。

北海道共同募金会によると、寄付金が保管されていた口座の通帳や印鑑は、元事務局長が1人で管理していた。

北海道では、赤い羽根共同募金や歳末たすけあい募金などで、年間6億〜7億円ほどの寄付金が集まっていた。

それだけの巨額資金を扱う組織で、資金管理の権限が一人に集中していたことになる。

内部統制の基本は、権限を分けることだ。

入出金を行う人。

承認する人。

記録する人。

監査する人。

それぞれを分離することで、不正を起こしにくくする。

ところが今回のケースでは、その基本が機能していなかった疑いがある。

不足を隠すため「借金で穴埋め」か

さらに衝撃的なのが、不足額の隠し方だ。

報道によると、元事務局長は無断で現金を引き出した後、不足が発覚しないよう金融機関から借金をして穴埋めしていたとみられている。

年度末には、取引業者から一時的に金を借りるような処理も行われていたとされる。

決算時点だけ帳尻を合わせ、数字の異常を見えにくくする。

もしこれが事実なら、単純な使い込みではなく、発覚を防ぐための継続的な偽装工作だった可能性がある。

「理事会の議事録」まで偽造か

8月になると、さらに重大な事実が報じられた。

元事務局長が、理事会の承認がないにもかかわらず、承認があったかのような議事録を作成し、道内2つの金融機関から合計約1億9000万円を借り入れていたとされる。

共同通信は、元事務局長が「立て替え金」などがあるよう装い、事実と異なる経理処理を繰り返し、粉飾決算を重ねていた可能性があると報じている。

ここまで来ると問題は「寄付金が消えた」だけではない。

決算書そのものを、どこまで信用できるのか。

という段階になる。

それでも外部監査では見抜けなかった

北海道共同募金会では、毎年外部監査も行われていた。

にもかかわらず、長期間にわたるとみられる不正を見抜けなかった。

赤い羽根のような募金団体にとって、最も重要な資産は「信頼」だ。

銀行のように預金保険があるわけでもない。

寄付者は、「この団体なら正しく使ってくれる」と信じて金を出す。

その信頼を支えるのが会計と監査だ。

その両方が機能しなかったのであれば、問題は元事務局長一人の責任にとどまらない。

7月、元事務局長を懲戒解雇

北海道共同募金会は7月13日付で、会計責任者だった元事務局長を懲戒解雇した。

同会は、刑事告訴や損害賠償請求も検討している。

ただし現時点では、使途不明金の全額について元事務局長の着服が刑事裁判で確定したわけではない。

北海道共同募金会自身も「元事務局長の関与の方法や責任、役員の責任の有無について第三者の立場から調査する」としている。

そして9月、新たに7000万円

事件はさらに拡大する。

9月16日、北海道共同募金会は、2025年度の決算作業を進める中で新たに約7000万円の使途不明金が判明したと発表。

6月に判明した約1億8000万円と合わせ、総額は約2億5000万円に膨らんだ。

新たに見つかった約7000万円については、関係書類に支払い内容や目的が記載されていないものがあったと報じられている。

まだ全容が分かっていないということだ。

第三者委員会を設置

北海道共同募金会は9月、弁護士と公認会計士による第三者委員会を設置した。

元事務局長の関与。

役員の責任。

内部統制。

監査体制。

これらを第三者の立場から調査する。

使途不明金の資料の一部は当局に差し押さえられているため、全容解明には時間がかかると説明している。

イオンが40年以上の協力を見送り

そして今回の問題が全国的に大きく注目された理由の一つが、イオンの対応だ。

イオンは1983年から40年以上にわたり赤い羽根共同募金に協力してきた。

しかし今年は、今回の不祥事を受けて協力を見送った。

店舗に募金箱を設置すること自体が、企業にとって「その団体を信頼している」というメッセージになる。

その信頼が崩れれば、協力を続けることも難しくなる。

政府も「赤い羽根」の着用を自粛

影響は企業だけではない。

例年10月1日の募金運動開始に合わせ、閣僚らが胸に赤い羽根を着けるのが恒例だった。

しかし今年は、厚生労働省が政府全体に対し、着用を控えるよう依頼した。

木原官房長官は10月2日の会見で、寄付金は国民一人一人の善意によるものだとして、信頼を大きく損なう事案が起きたことは「大変遺憾」と述べた。

【動画】2億5000万円使途不明、政府も異例の対応

TBS NEWS DIG:木原官房長官「信頼を大きく損なう」会見映像

また、使途不明金が1億8000万円と判明した当初の会見映像は、HTB北海道ニュースでも公開されている。

HTB北海道ニュース:「いずれお詫びしたい」北海道共同募金会1.8億円使途不明

募金初日、「やっぱり悪いです」

10月1日。

不祥事の余波が残る中でも、今年度の共同募金運動は予定通り始まった。

北海道恵庭市でも街頭募金が行われたが、現場からは厳しい声が上がった。

募金の成果について、現地の共同募金委員会会長は「やっぱり悪い」と話している。

無言で通り過ぎる人も多く、事件が募金活動に直接影響している様子が報じられた。

助成を待つ福祉団体にも影響

今回、最も割を食っているのは、不正に関係していない人たちかもしれない。

北海道共同募金会の寄付金は、地域の社会福祉協議会、NPO、ボランティア団体、福祉施設など、毎年道内2000を超える事業の助成に使われている。

ところが使途不明金問題の影響で、2026年度の福祉活動などへの助成金は予定額の約5割にとどまったと報じられている。

金を失った。

信用を失った。

その結果、支援を必要としている団体まで影響を受ける。

「北海道だけの問題」で終わるのか

赤い羽根共同募金は、都道府県ごとにそれぞれの共同募金会が運営している。

今回の不正疑惑は北海道共同募金会で起きた問題であり、全国の共同募金会で同じことが起きているという話ではない。

しかし一般の寄付者から見れば「赤い羽根」は一つのブランドだ。

北海道で起きた事件でも、京都や東京など他地域の募金活動にイメージ悪化が波及する。

各地の共同募金会からも「信頼がなければ協力してもらえない」という危機感が出ている。

なぜ1人にここまで任せていたのか

今回の事件で最も重要な問いは、ここかもしれない。

なぜ年間6億〜7億円もの寄付金を扱う組織が、通帳と印鑑を一人の会計責任者に集中させていたのか。

寄付者から見れば、誰が事務局長なのかは関係ない。

信じているのは「赤い羽根共同募金」という組織だ。

だから組織には、一人が不正をしようとしてもできない仕組みを作る責任がある。

複数人承認。

オンラインバンキングの権限分離。

残高の第三者確認。

予告なし監査。

会計担当者の定期的な配置転換。

基本的な内部統制を、本当に行っていたのか。

「善意」で成り立つ仕組みだからこそ

赤い羽根共同募金は1947年に始まった。

今年で80回目。

長年にわたり、日本全国で当たり前のように続いてきた。

小学校で赤い羽根をもらった人。

町内会で募金した人。

スーパーの募金箱に小銭を入れた人。

会社で協力した人。

その一人一人の金額は小さいかもしれない。

だが、その善意が積み上がって億単位になる。

だからこそ、一度信頼が崩れるとダメージは大きい。

本当に問われるのは「2億5000万円を取り戻せるか」だけではない

もちろん使途不明金の全容を明らかにし、可能な限り回収することは重要だ。

刑事責任があるなら追及する。

役員や監査側に責任があるなら明確にする。

しかし、それだけでは足りない。

寄付者が次に募金箱を見た時、

「この金、本当に届くのか?」

と思ってしまったら、それ自体が最大の損失だ。

2億5000万円という数字は大きい。

だが、80年積み上げてきた信頼の価値は、それ以上かもしれない。

赤い羽根共同募金が本当に取り戻さなければならないものは、消えた2億5000万円だけではない。

「善意を預けても大丈夫」という信用そのものだ。

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