
北海道警釧路署は2026年10月12日、神奈川県相模原市のタクシー運転手、渡部広大容疑者(23)を列車往来危険の疑いで逮捕した。9月30日、北海道釧路町のJR釧網線・遠矢駅と釧路湿原駅の間で、線路脇の樹木をチェーンソーで切断し、倒木を通信ケーブルに接触させた疑いがある。
渡部広大容疑者を逮捕 釧網線の線路脇でチェーンソー使用か
北海道警釧路署は2026年10月12日、神奈川県相模原市のタクシー運転手、渡部広大容疑者(23)を列車往来危険の疑いで逮捕した。9月30日、北海道釧路町のJR釧網線・遠矢駅と釧路湿原駅の間で、線路脇の樹木をチェーンソーで切断し、倒木を通信ケーブルに接触させた疑いがある。
釧路湿原を走るノロッコ号は、雄大な湿原の風景をゆっくり楽しめる観光列車として長年親しまれてきた。車窓からの景色だけでなく、湿原の中を走る列車そのものも写真愛好家にとって魅力的な被写体だった。最終運行を控えた時期には、最後の姿を記録したいという思いが強まる。
報道によると、渡部容疑者は「夕陽ノロッコ号を撮影するラストチャンスだった」とも説明している。夕暮れの光を背景に列車を撮影するには、構図や視界の確保が重要になる。しかし、撮影の障害になる樹木があったとしても、それを勝手に伐採してよい理由にはならない。
今回の事件は、撮影のために立ち位置を工夫することと、撮影対象の周辺環境を自分の都合に合わせて改変することの違いを浮き彫りにした。鉄道沿線の樹木は景観の一部であり、土地の所有者や鉄道事業者の管理対象でもある。撮影者の判断で切断すれば、設備への被害や事故の原因になり得る。
「撮り鉄」と呼ばれる鉄道写真愛好家の大多数が危険行為をしているわけではない。今回のような事件を趣味全体の性質として決めつけるのではなく、具体的な行為とその危険性を問うことが必要だ。
ノロッコ号ラストランを撮影したかった 供述の内容
現場は10月10日に最終運行を迎えた観光列車「くしろ湿原ノロッコ号」の撮影ポイントだった。渡部容疑者は「どうせなら良い列車の写真を撮りたいと思い、チェーンソーで切った」「撮影するラストチャンスだった」などと供述したと報じられている。37年の歴史を持つ列車の最後の姿を撮りたいという動機があったとみられるが、鉄道用地の樹木を勝手に切ることは認められない。
通信ケーブルは鉄道の運行に必要な情報を伝える設備の一部だ。信号や踏切、分岐器の制御に関わる設備が損傷すれば、安全確認や運行管理に支障が生じる可能性がある。列車が直接木にぶつからなかったとしても、倒木がケーブルに接触するだけで重大な問題となる。
北海道文化放送は、渡部容疑者が木を切断して倒木を通信ケーブルに接触させた疑いで送検されたと報じた。テレビ朝日は、現場で木柱に鋭いV字状の切り込みが見つかったことや、通信ケーブルを支える木柱4本にも切り込みが確認されたことを伝えている。
木柱の切り込みと容疑者との関係は警察が調べている段階で、確認された損傷をすべて本人の行為だと断定することはできない。一方、本人がチェーンソーによる樹木の切断を認める供述をしていると報じられており、捜査では伐採の範囲や安全設備への影響が重視されるとみられる。
列車往来危険の容疑が適用されている点からも、問題の中心が景観を損なったことだけではないと分かる。鉄道の安全運行に危険を生じさせたかどうかが問われている。実際に列車事故が発生したと報じられているわけではないが、事故の発生は危険行為を問題にするための唯一の条件ではない。
通信ケーブルに倒木が接触 列車の運行に生じた危険
倒木が接触したのは踏切や分岐器などの信号切り替えに使われる通信ケーブルで、切断されれば釧網線の全列車が運休する可能性があったと報じられた。周辺では通信ケーブル用の木柱4本にも切り込みが見つかり、警察が関連を調べている。これらすべてが容疑者の行為と確定したわけではない。
JR北海道の通報から逮捕まで 撮り鉄のマナーと刑事責任
10月2日にJR北海道が線路沿いの伐採について警察に相談し、情報提供を受けた警察が捜査して渡部容疑者を特定した。10月14日には送検された。事件は単なる撮影マナーの問題ではなく、列車の安全運行を危険にさらした疑いとして捜査されている。実際の脱線事故が起きたという報道ではないが、事故に至らなかったから問題が小さいということではない。