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暁星高校15歳生徒がフランス研修中に死亡 17人で海水浴、教員は「1人戻っていない」ことに気づかず 学校「全ての責任」

暁星高校のフランス研修中に起きた事故を伝えるニュース風イメージ

東京・千代田区の暁星高等学校で、2025年7月にフランス語学研修中だった高校1年の男子生徒(15)が海水浴中に溺れ、その後死亡した事故について、学校法人暁星学園が第三者による詳細調査報告書を公表した。

事故はフランス南部・カンヌで起きた。研修に参加していた生徒20人のうち17人が海水浴に参加し、引率教員2人も同行していた。しかし、生徒たちが沖合から戻った際、引率していた教員は男子生徒1人が戻っていないことに気づかなかった。

現場では秒速約7メートルの風が吹き、波の高さは約0.9メートル。監視員もいなかった。さらに、別の生徒も海水を飲み込み、周囲にいた外国人に救助される状況が起きていた。

第三者委員会は、こうした状況を踏まえ、暁星学園について「危機管理意識・体制の不十分性は深刻なレベル」と指摘。学校法人側も、今回の事故について「本件事故は本法人に全ての責任がございます」と明言して謝罪した。

単なる「海外研修中の水難事故」ではない。なぜ15歳の生徒が1人戻っていないことを、引率側は把握できなかったのか。なぜ危険な海況の中で遊泳が行われたのか。そして、なぜ学校安全計画や危機管理マニュアルが整備されていなかったのか。

2025年7月、フランス・カンヌで語学研修

暁星高校のフランス語学研修は2025年7月に実施された。学校が当時公表した資料によると、参加したのは高校1年生12人、高校2年生8人の計20人。引率教員2人と添乗員1人が同行していた。

研修はフランス・カンヌで行われ、7月20日に日本を出発し、8月7日に帰国する予定だった。事故が起きたのは現地到着から間もない7月21日。つまり、フランスでの研修が始まってほぼ直後だった。

17人が海水浴に参加、3人は宿舎に残った

事故当日、生徒20人のうち17人が海水浴に参加した。残る3人は宿舎で休養・待機していた。海水浴には引率教員2人が同行していた。

問題は、その後だ。生徒たちが沖合から戻った際、引率教員は、男子生徒1人が戻っていないことに気づかなかったとされる。

沖合の浮島まで少なくとも50メートル

報告書によると、生徒たちは砂浜から沖合に設置された浮島まで泳いでいた。その距離は少なくとも約50メートルあったとされる。

50メートルという距離だけを見れば、泳ぎに慣れている人には極端に遠く感じないかもしれない。しかし、プールと海では条件が全く違う。波、風、潮流、足がつかない恐怖、海水を飲み込んだ際のパニックなど、海には複数の危険要因がある。

秒速7メートルの風、波高0.9メートル

事故当時、現場では秒速約7メートルの風が吹き、波の高さは約0.9メートルだったと報告されている。さらに、現場には監視員がいなかった。

第三者委員会は、引率教員2人が海水浴の危険性を十分に認識していなかったため、遊泳するかどうかの判断が実質的に生徒側へ委ねられていたことを事故要因の一つとして指摘した。

別の生徒も溺れかけ、外国人に救助されていた

事故当日は、死亡した男子生徒だけが危険な状態になっていたわけではない。報道によると、別の生徒も海水を飲み込むなどして溺れそうになり、周囲にいた外国人に救助されていた。

同じ時間帯に複数の生徒が危険な状態になっていたのであれば、当時の海が高校生の集団遊泳に適した環境だったのかという疑問がさらに強くなる。

発見時には心肺停止、1週間後に死亡

男子生徒はその後、海中で発見された。学校が事故直後に公表した資料では、発見までに時間を要したため、長時間にわたり脳への酸素供給が十分に行われない状態になったと説明している。

現地では救命措置が行われ、ニース市内の病院へ搬送された。しかし回復することなく、7月28日に死亡が確認された。事故発生から7日後だった。

第三者委員会は「深刻なレベル」と指摘

事故後、暁星学園は遺族の要望も踏まえ、2025年11月5日付で詳細調査委員会を設置した。委員会は事故の原因だけでなく、研修の運営体制、過去の研修、危機管理体制などについて調査した。

報告書は2026年4月30日付で学園側に提出され、その後、遺族との協議を経て10月3日に全文が公表された。

そして報告書は、暁星学園の危機管理について極めて厳しい評価をしている。「学園の危機管理意識・体制の不十分性は深刻なレベルであった」という指摘だ。

学校安全計画が作られていなかった

さらに重大なのが、学校の安全管理体制そのものだ。報告書では、法律に基づいて求められる学校安全計画が作成されていなかったことが判明した。

学校安全計画は、学校内外で生徒の安全を確保するため、事故や災害などを想定して安全教育や安全管理の方針を定めるものだ。これが十分に整備されていなかったことは、今回の事故が単なる現場教員の判断ミスだけではなく、組織としての安全管理に問題があったことを示している。

危機管理マニュアルも未整備

さらに、危機管理マニュアルも整備されていなかったとされる。海外研修では、交通事故、病気、犯罪、自然災害、水難事故、パスポート紛失、現地医療機関への搬送など、国内とは異なるリスクがある。

だからこそ、事故が起きた際に誰が判断し、誰が連絡し、誰が生徒を管理するのかを事前に明確にしておくことが重要になる。今回、その土台となる危機管理体制自体が不十分だった。

なぜ危険性を判断する側が生徒になっていたのか

第三者委員会は、海水浴を行うかどうかの判断が、生徒側に委ねられていた点も問題視している。

高校生は15~17歳前後。ある程度の判断能力はあるが、学校行事中の安全について最終責任を負う立場ではない。特に海況や気象条件、監視員の有無などは、引率する大人が判断すべき事項だ。

遊泳の判断を生徒に委ねた結果、危険な条件下でも海水浴が行われたのであれば、安全管理の設計そのものに問題があったことになる。

「泳げるか」ではなく「安全に管理できるか」

海水浴事故では、しばしば本人が泳げたかどうかに注目が集まる。しかし学校行事では、それだけでは不十分だ。

重要なのは、学校側が参加者全員を安全に管理できる環境だったかどうかだ。監視員はいない。風は強い。波もある。沖には浮島がある。生徒17人に対し引率教員は2人。そして1人が戻っていないことをすぐ把握できなかった。

これらの条件を合わせて考えると、事故防止のための複数の安全策が十分に機能していなかったことが分かる。

学校法人は「全ての責任」を認めた

2026年10月3日、暁星学園は公式サイトで謝罪文を公表した。その中で、事故の最大の原因について、法人の危機管理意識と危機管理体制が不十分だったことにあると認めた。

さらに、「本件事故は本法人に全ての責任がございます」と明記した。

学校側が事故の責任についてここまで明確な表現を使うのは重い。学園は、安全管理体制の不備によって生徒の将来とかけがえのない命を失わせてしまったとして、遺族や生徒、保護者、関係者へ謝罪している。

事故から報告書公表まで1年以上

事故が起きたのは2025年7月。詳細調査委員会が設置されたのは同年11月。報告書が学校側に提出されたのは2026年4月30日。そして一般に公表されたのは10月3日だった。

事故発生から公表まで1年以上が経過している。そのため、2026年10月にニュースが大きく報じられたことで、初めて事故の詳細を知った人も多い。

なぜ1人不足していることに気づけなかったのか

今回の事故で最も根本的な疑問は、やはり人数確認だ。

生徒17人が海へ入り、戻ってきた。その時点で1人不足していた。しかし引率教員は、それを直ちに把握できなかった。

もし海から戻った時点ですぐ人数確認を行い、不足が分かっていれば、捜索開始はより早かった可能性がある。水難事故では、救助までの時間が生死を左右する。

第三者委員会が危機管理体制そのものを問題視した背景には、こうした基本的な安全確認が組織的に徹底されていなかったことがあるとみられる。

海外研修だからこそ、より厳しい安全管理が必要

海外研修では、言語、文化、医療制度、交通事情、緊急連絡網などが国内とは異なる。事故が起きた場合、日本国内の学校行事より対応が難しくなる。

そのため、通常以上に事前の危険予測と役割分担が求められる。海水浴を予定に組み込むのであれば、現地の監視員の有無、海況、遊泳区域、参加人数、泳力、救命設備などを事前に確認する必要がある。

今回の報告書が示しているのは、それらを個人の経験や現場判断だけに任せる危険性だ。

2026年6月に安全委員会を設置

暁星学園は、再発防止策として2026年6月に安全委員会を立ち上げた。

今後、安全管理体制を早急に構築し、同様の事故を起こさないよう取り組むとしている。

ただ、安全委員会を作るだけで事故を防げるわけではない。重要なのは、現場の教員が危険を察知した際に中止する判断を取れること、点呼や人数確認を形式ではなく確実に行うこと、そして緊急時の対応を全員が共有していることだ。

「単なる不運な事故」で終わらせないために

海では、どれだけ注意していても事故が起きることはある。しかし今回、第三者委員会は事故を単なる偶発的な水難事故とは位置づけなかった。

危険性の認識、遊泳判断、人数確認、監視体制、学校安全計画、危機管理マニュアル。複数の段階に問題があり、それが重なった結果として事故につながったとみるべき内容になっている。

そして学校法人自身も、その最大の原因が自らの危機管理体制にあったと認めた。

15歳の生徒が亡くなった事実は変わらない

報告書を公表し、謝罪し、安全委員会を設置しても、失われた命は戻らない。

男子生徒は高校に入学したばかりの15歳だった。語学研修は本来、新しい言語や文化に触れ、将来の可能性を広げるための機会だったはずだ。

その研修中に事故が起き、帰国することなく亡くなった。

だからこそ今回の報告書で最も重要なのは、誰か1人のミスを探して終わることではない。なぜ危険な状況を止められなかったのか。なぜ人数確認ができなかったのか。なぜ学校として安全管理の仕組みを準備できていなかったのか。その構造を検証し、同じことを繰り返さない仕組みに変えることが求められている。

今後問われるのは再発防止策が本当に機能するか

暁星学園は事故の責任を全面的に認めた。しかし、謝罪で終わりではない。

安全計画や危機管理マニュアルを整備すること。海外研修の実施基準を見直すこと。水辺の活動では監視体制を明確にすること。生徒の人数確認を徹底すること。そして、少しでも危険があれば中止する判断を現場で迷わず取れるようにすること。

今回の事故を受けて作られる仕組みが、実際の学校現場でどこまで機能するのかが今後問われる。

「17人で海に入り、1人が戻っていないことに気づかなかった」。この事実を、単なる過去の事故として終わらせてはいけない。

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