
警察署の金庫から、留置された人たちの預かり金約100万円が消えた。 埼玉県警大宮署で発覚した現金不足。内部犯行の可能性、鍵の管理、点検の不備、そして県費による補填まで、判明した事実を整理する。
大宮警察署で100万円が消失 発覚までの経緯
埼玉県警大宮警察署で、留置施設に入る容疑者から預かった現金約100万円が金庫からなくなっていた。2026年10月14日に県警が明らかにした。警察署の金庫に保管されていたのは押収した証拠品ではなく、留置される人が入所時に所持していた現金だ。預けた本人に返還する必要がある金銭であり、警察には厳格な保管責任がある。
不足が判明したのは同年4月7日。署員が金庫の現金残高と出納記録を照合したところ、記録より約100万円少なかった。最後に一致が確認されたのは2025年7月28日の県警本部による監査時点で、その後約8か月以上、適切な残高点検が行われていなかったと報じられている。したがって、現金がいつなくなったのか、1回で持ち出されたのか、複数回に分かれたのかは明らかになっていない。
今回の問題で特に重大なのは、警察署の内部にあった金庫であることに加え、預かり金が複数人分だった点だ。誰の預かり金にどの程度の不足が生じたか、記録のどの段階で食い違いが起きたかも調査の焦点となる。発覚が4月で公表が10月となった理由についても、今後の説明が求められる。
内部犯行なのか?複数の鍵と防犯カメラの死角
読売新聞は捜査関係者への取材として、金庫が署員以外は立ち入れない場所にあり、県警が内部の人間による持ち出しを疑っていると報じた。ただし、2026年10月14日時点で犯人が特定された、警察官が逮捕されたという発表は確認できない。内部犯行は捜査上の可能性であり、確定した事実ではない。
金庫は複数の鍵で開ける仕組みで、鍵は署幹部らが管理していたという。一方で、担当者以外でも鍵を使える状態だったとの報道もある。形式上は鍵が分かれていても、実際に誰がどの鍵を使ったのか追跡できなければ、内部統制としては十分とは言い難い。鍵の貸し借りや保管場所、開閉記録の有無、異動や勤務交代時の引き継ぎが適切だったかが重要になる。
さらに、読売新聞によれば金庫周辺を映す防犯カメラは設置されていなかった。映像による検証ができない場合、鍵の使用履歴、勤務記録、金銭の出納記録、関係者の説明などを突き合わせる必要がある。今回の事件は『鍵をかけていたから安全』とは言い切れない管理の弱点を浮き彫りにした。
消えた100万円を県費で補填 なぜ税金が使われるのか
読売新聞は、留置施設を出る容疑者らに返す現金が不足する事態を避けるため、埼玉県警が約100万円を補填したと報じている。県は地方自治法に基づく手続きを経て県予算から執行する方針とされる。ここで押さえておきたいのは、補填が行われたからといって、紛失の原因が解決したわけでも、誰かの責任が消えるわけでもないことだ。
警察が預かった金銭を返す義務と、紛失を引き起こした人物や管理上の責任を追及する問題は分けて考える必要がある。預けた人からすれば、警察内部の事情によって返還が遅れたり、金額が減ったりすることは認めがたい。一方、県費が使われるならば、最終的に損失を誰が負担するのか、原因が判明した場合に回収するのかという疑問も残る。
公金による補填には、被害を受ける可能性がある人を守る意味がある。しかし同時に、管理ミスや窃盗の疑いがある状況で公費を支出する以上、経緯と責任の説明は不可欠だ。支出の法的根拠、補填額の確定方法、今後の求償の有無などについては、追加の発表を待つ必要がある。
約9か月の点検不備 埼玉県警に問われる管理責任
県警の内規では預かり金を定期的に確認することになっていたが、大宮署では監査後の確認が適切に行われていなかった。今回の問題は、現金が消えたことだけでなく、その異常を早期に発見する仕組みが機能していなかったことにもある。仮に一度の不正な持ち出しだったとしても、毎日の確認や複数人による照合が実施されていれば、発覚までの期間を短くできた可能性がある。
金庫の鍵を複数人が扱える状態だったこと、防犯カメラがなかったこと、点検が継続されていなかったこと。これらはそれぞれ独立した問題に見えるが、組み合わさることで『いつ、誰が、どのように現金を扱ったか』を後から確認しづらくしている。県警は署員らから事情を聴き、窃盗事件の可能性も視野に調べている。
斎藤克也首席監察官は、厳正に保管されるべき現金が所在不明になったことを遺憾とし、調査・捜査と再発防止に取り組む趣旨のコメントを出した。必要なのは形式的な注意喚起にとどまらず、残高確認の実施記録、鍵の利用制限、開閉履歴の保存、第三者による監査など、検証可能な管理体制を整えることだ。事件の結論が出るまでは、特定の署員を犯人扱いすることはできない。しかし、組織としての保管責任と説明責任はすでに問われている。
※2026年10月14日時点の報道に基づく。参考:読売新聞、共同通信、テレビ朝日、FNN、時事通信。