
2026年1月、東京都内で一つの衝撃的な逮捕が報じられました。それは、著名アーティストのファンクラブを運営する会社の社長による、信じがたい犯罪でした。この事件は、表の顔と裏の顔を持つ人間の恐ろしさ、そして現代社会に潜む深刻な問題を浮き彫りにしています。
京都大学工学部卒の「異色のプロデューサー」
粟津彰容疑者——この名前は、一部の業界関係者の間では知られた存在でした。京都大学工学部という高学歴を背景に、「異色のプロデューサー」として紹介されていたこの男性は、東京・渋谷に本社を置く「カケルエンターテイメント」という会社の代表を務めていました。
粟津彰容疑者が率いるカケルエンターテイメントの事業内容は一見すると健全そのもの。著名アーティストのファンクラブ運営、ライブイベントの制作、各種エンターテイメント企画——表面的には、音楽業界で活躍する典型的なプロデューサーの姿がそこにはありました。
しかし、その裏側には、想像を絶する悪行が隠されていたのです。
歌舞伎町の路上で始まる「勧誘」
2024年7月。東京の夜の街・歌舞伎町の路上で、粟津容疑者による計画的な「狩り」が始まっていました。
彼の手口は巧妙でした。歌舞伎町を徘徊する若い女性たちに声をかけ、現金を渡して自分の自宅やホテルへ連れ込む。その過程で、彼は被害者たちに対して、ある「約束」をしていました。
「動画を撮らせてほしい。でも顔は加工するから大丈夫」
この言葉は、後に多くの被害者を絶望のどん底に突き落とすことになります。
15歳の少女への犯行
2025年7月上旬のこと。粟津彰容疑者は、歌舞伎町の「トー横」と呼ばれるエリアに出入りしていた一人の少女に目をつけました。その少女は、わずか15歳の中学生でした。
カケルエンターテイメントの粟津彰容疑者は、少女に現金4万円を渡し、新宿区歌舞伎町のホテルへ連れ込みました。そして、その場で彼女に対して性的暴力を加え、その一部始終を動画で撮影したのです。
撮影前、彼は少女に対して「1万円追加するから動画を撮らせて。顔は加工する」と約束していました。しかし、その約束は守られませんでした。実際に施された加工は、本人と分かる程度の最小限のものに過ぎなかったのです。
そして、粟津容疑者はこの動画を、少女の同意なく、インターネット上でアダルトビデオとして販売してしまったのです。
1700本の動画——組織的な犯行の実態
警視庁の捜査が進むにつれ、この事件の規模の大きさが明らかになっていきました。
粟津容疑者の自宅から押収されたハードディスクには、10~20代の女性が登場するわいせつな動画が約1700点も保存されていたのです。1700本。その数字が意味するところは、この男が長期間にわたって、組織的かつ計画的に同様の犯行を繰り返していたということです。
2024年7月から2025年10月までの間に、警視庁は彼が少なくとも1000万円以上の売上を得ていたと推定しています。つまり、彼はこの犯罪を「事業」として営んでいたのです。
彼の手口は、歌舞伎町の路上やSNSを通じて女性を誘い、現金を渡して自宅やホテルへ連れ込み、性的暴力を加えた上で動画を撮影し、それをインターネット上で販売するというものでした。その過程で、彼は出演契約書や説明書を一切渡していません。被害者たちは、自分たちがどのような形で搾取されているのか、完全には理解していなかった可能性が高いのです。
「顔はAIで加工する」という嘘
特に悪質だったのは、粟津容疑者が被害者に対して使用していた「顔はAIで加工する」という約束です。
この言葉は、被害者たちに対して一種の「安心感」を与えるものでした。「顔は分からなくなるから、後で誰かに見られることはない」——そう信じさせることで、被害者たちの抵抗を弱め、撮影に応じさせようとしていたのです。
しかし、実際に施された加工は、その約束とは程遠いものでした。本人と分かる程度の加工しかされていなかったのです。つまり、粟津容疑者は最初から、この約束を守るつもりなど全くなかったのです。
被害者たちが後にインターネット上で自分たちの姿を見つけたとき、その絶望感はいかばかりだったでしょうか。自分の顔が、自分の意思に反して、世界中に公開されている。その恐怖と羞恥心は、言葉では表現しきれないものがあります。
「女の子は18歳という認識だった」——容疑の一部否認
逮捕後、粟津容疑者は「女の子は18歳という認識だった」と供述し、容疑の一部を否認しています。
しかし、この弁明は、彼の悪質さをさらに浮き彫りにするものです。なぜなら、15歳の少女が18歳に見えるはずがないからです。また、たとえ相手が18歳だったとしても、出演契約書を渡さずにAVを制作・販売することは、2022年に施行された「AV出演被害防止・救済法」に明らかに違反しています。
つまり、粟津容疑者の弁明は、自分の犯行の悪質性から目をそらすための、単なる言い訳に過ぎないのです。
GACKTの怒り——「ヘドが出る」
この事件を受けて、予想外の人物から声明が発表されました。それは、著名アーティストのGACKTでした。
粟津彰容疑者が代表を務めていた「カケルエンターテイメント」は、GACKTのファンクラブ運営会社だったのです。つまり、GACKTは、粟津彰容疑者と直接的な関係を持つ立場にあったのです。
GACKTはX(旧ツイッター)で、以下のように述べています。
「ファンクラブ運営会社の委託先元役員が、事件を起こし逮捕されたことを報道で知った」
報道で知った——この言葉が、GACKTがこの事件にいかに深く関わっていなかったかを示しています。彼は、自分の会社の代表が、このような犯罪を行っていたことを、報道を通じて初めて知ったのです。
GACKTの怒りは、言葉の端々に表れています。
「業務の下請けに関わっていた人物とはいえ、少しでもボクに関わっていた人間が、裏でこのような行為をしていたと思うと、正直、ヘドが出る」
「ヘドが出る」——この言葉は、GACKTの怒りと嫌悪感の深さを物語っています。彼は、自分の名前が、このような犯罪と関連付けられることへの不快感を隠せないのです。
「大人として、人として、あり得ない行為だ。そこに自身の咎を省みる瞬間はなかったのか。理解に苦しむ」
「人として越えてはならない一線を踏み越えた、恥ずべき行為の何ものでもない」
「司法による厳正な裁きを強く求めたい」
GACKTは、粟津容疑者に対して、司法による厳正な処罰を求めています。彼の言葉は、単なる感情的な反発ではなく、この事件の重大性を認識した上での、深刻な警告なのです。
「トー横」——若い女性たちが集まる危険な場所
この事件を語る上で、欠かせない存在が「トー横」です。
東京・新宿の歌舞伎町にある「トー横」は、若い女性たちが集まる場所として知られています。家出少女や、経済的に困窮した若い女性たちが集まり、時には違法な行為に巻き込まれることもある、危険なエリアです。
粟津容疑者は、このエリアに出入りしていた女性たちを狙っていました。彼らは、経済的に困窮していたり、家族との関係が悪かったりする女性たちを、現金で釣り、自分たちの犯罪に巻き込んでいくのです。
この事件の被害者である15歳の少女も、家出して「トー横」に出入りしていました。彼女は、警視庁の少年育成課員に補導されるまで、自分がどのような形で搾取されているのか、完全には理解していなかった可能性があります。
2022年施行の「AV出演被害防止・救済法」
この事件で問われている「AV出演被害防止・救済法違反」は、2022年6月に施行された比較的新しい法律です。
この法律は、成人年齢の引き下げに伴う18、19歳のAV出演被害を防ぐため、映像の制作や配信をする側に対し、撮影する性行為の内容などを明記した契約書を出演者に渡すことを義務づけています。
出演者の年齢や性別は問わないとされているため、この法律は、粟津容疑者のような犯罪者に対して、強力な抑止力となるはずでした。しかし、粟津容疑者は、この法律を完全に無視し、契約書を一切渡さずにAVを制作・販売していたのです。
この法律に違反した場合、6ヶ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
会社の対応——「既に解雇・解任した」
カケルエンターテイメントは、粟津彰容疑者の逆捕後、ホームページで以下のコメントを発表しました。
「事態の重大性を鑑み、既に解雇・解任した。本件に関する事実関係の確認を進め、社内体制の見直しおよびコンプライアンスの一層の強化を図り、再発防止に努める」
「既に解雇・解任した」——この言葉は、カケルエンターテイメントが粟津彰容疑者を素早く処罫したことを示しています。しかし、同時に、この言葉は、カケルエンターテイメントがこのような犯罪を事前に防ぐことができなかったという、失敗をも示しています。
コンプライアンスの強化、再発防止——これらの言葉は、会社が今後、同様の事件を防ぐための努力をすることを約束しています。しかし、既に被害を受けた女性たちの心の傷は、簡単には癒えません。
被害者たちの声なき声
この事件で最も重要なのは、被害者たちの存在です。
15歳の少女を含む、約1700本の動画に登場する女性たちは、自分たちの意思に反して、インターネット上で永遠に公開されることになります。その動画は、削除されたとしても、どこかで誰かに保存されているかもしれません。彼女たちは、生涯にわたって、この恐怖と向き合わなければならないのです。
「見られ続ける恐怖」——これは、AV出演被害者たちが抱える、最大の苦しみの一つです。自分の姿が、自分の意思に反して、世界中で見られ続けるという恐怖。その恐怖は、時間の経過とともに薄れることはなく、むしろ深まっていくのです。
社会に問われる責任
粟津彰容疑者を遭捕させたカケルエンターテイメント事件は、社会全体に対して、重大な問いを投げかけています。
まず、なぜこのような犯罪が、これほど長期間にわたって続いていたのか。警視庁の捜査によれば、粟津容疑者は2024年7月から2025年10月までの間に、1000万円以上の売上を得ていたとのこと。つまり、この犯罪は、かなりの規模で行われていたはずなのです。
なぜ、誰もこれを止めることができなかったのか。
次に、なぜ若い女性たちが、このような危険な状況に置かれているのか。「トー横」に集まる女性たちの多くは、家出少女や経済的に困窮した人たちです。彼女たちは、社会的に保護されるべき立場にあるのに、むしろ犯罪の対象にされているのです。
さらに、なぜ粟津容疑者のような人物が、著名アーティストのファンクラブ運営会社の代表になることができたのか。彼の採用時に、適切な身元調査や背景確認が行われていたのか。
これらの問いに対する答えは、簡単ではありません。しかし、これらの問いに真摯に向き合わない限り、同様の事件は繰り返されるのです。
「性欲に負けてしまった」——容疑者の供述
粟津彰容疑者は、逆捕後の取調べで「性欲に負けてしまった」と供述しているとのこと。カケルエンターテイメントの粟津彰容疑者による犯行は、計画的で継続的なものであったことが明らかになっています。
この供述は、彼の犯行の悪質性をさらに浮き彫りにするものです。なぜなら、これは単なる一時的な衝動ではなく、1700本の動画、1000万円以上の売上という事実によって、明らかに計画的で継続的な犯行だからです。
「性欲に負けてしまった」という言葉は、彼の責任逃れの試みに見えます。あたかも、自分は被害者であり、自分の性欲という抗いがたい力に支配されているかのような印象を与えようとしているのです。
しかし、その言葉は、彼の犯行の計画性と継続性を否定することはできません。彼は、被害者たちに対して、明確な嘘をついています。「顔はAIで加工する」という約束は、被害者たちを騙すための、計画的な嘘なのです。
相談窓口——被害者たちへの支援
この事件を受けて、改めて注目されているのが、性犯罪・性暴力に関する相談窓口です。
全国にワンストップ支援センターが設置されており、全国共通番号「#8891」で、通話料無料で相談することができます。
被害者たちが、一人で苦しむ必要はありません。専門家による支援を受けることで、心理的なケアや、法的なアドバイスを得ることができるのです。
終わりに——この事件が示すもの
粟津彰容疑者の逮捕は、現代社会に潜む深刻な問題を浮き彫りにしました。
高学歴で、表面的には成功しているように見える人物が、その裏側で、信じがたい犯罪を行っていたという事実。若い女性たちが、社会的に保護されるべき立場にありながら、犯罪の対象にされているという現実。そして、そのような犯罪が、長期間にわたって続いていたという、社会全体の失敗。
これらは、単なる一個人の犯罪ではなく、社会全体が向き合わなければならない問題なのです。
GACKTが述べた「人として越えてはならない一線を踏み越えた」という言葉は、粟津容疑者だけでなく、このような犯罪を許す社会全体に対する、警告でもあるのです。
被害者たちが、一日も早く心の傷から回復し、自分たちの人生を取り戻すことができることを、心から祈ります。
そして、社会全体が、このような犯罪を二度と繰り返さないために、何ができるのかを、真摯に考える必要があるのです。
参考資料
- 毎日新聞(2026年1月9日)
- 朝日新聞(2026年1月9日)
- 日本テレビ(2026年1月8日~9日)
- 東スポWEB(2026年1月9日)
- 日本経済新聞(2026年1月9日)
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