はじめに:「7月5日」はどこから来たのか?
2025年7月5日。この日付を巡って、いま日本中が騒然としている。YouTube動画の再生回数は200万回を超え、香港の航空会社が日本便を減便し、気象庁長官が異例の会見を開くまでに社会現象化した「7月5日終末論」。
しかし、この騒動には重大な疑惑がある。果たして、これらの予言は本当に古来から伝わる「本物」なのか?それとも、特定の予言がバズった後に便乗して作られた「後付け」なのか?
徹底的な時系列調査を行った結果、驚くべき事実が浮かび上がってきた。
発火点:たつき諒の2021年発表
確実なタイムライン
2021年10月:たつき諒氏『私が見た未来 完全版』発売
記載内容:「2025年7月に大災難」「夢を見た日は2021年7月5日」
注意点:災害発生日は「7月5日」ではなく「7月中」と明記
すべての「7月5日終末論」の出発点は、間違いなくたつき諒氏の2021年発表である。東日本大震災を予言したとされる実績もあり、これが最初の「火種」となった。
しかし問題は、この後に続々と現れた「関連予言」の真偽だ。
疑惑その1:ホピ族予言の「後付け疑惑」
ホピ族予言の矛盾点
ホピ族の予言には具体的な日付は示されていません。しかし、都市伝説系YouTuberやスピリチュアル界隈では、「2025年7月5日がホピ族の予言に関連する重要な日になる」と言われています。
(出典:2025年調査資料)
ホピ族予言の実態調査
ホピ族は確かに「青い星のカチーナ」など、多くの予言を持つアメリカ先住民だ。しかし、彼らの伝統的な予言に「2025年7月5日」という具体的な日付は一切記載されていない。
判定:後付けの可能性が極めて高い 要注意
ホピ族の「青い星」予言は古来からのものだが、「2025年7月5日」との関連付けは明らかにたつき諒ブーム以降の後付けと判断される。
疑惑その2:ブンジュ村「SHOGEN」の怪しい経歴
ブンジュ村予言の時系列
- ~2023年:SHOGENの活動自体は確認されるが、「2025年7月」への言及なし
- 2023年9月18日:初めて「2025年7月に日本が大きく変わる」との記事が登場
- 以降:たつき諒ブームと歩調を合わせて情報拡散
SHOGENとブンジュ村の実在性問題
ペンキ画家SHOGENがタンザニアのブンジュ村でアートを学んだことは事実のようだ。ブンジュ村も実在する。しかし、「2025年7月5日」に関する予言の初出時期が極めて怪しい。
SHOGENの「ブンジュ村シャーマンからの日本人特別予言」が最初に言及されたのは、たつき諒ブームが本格化した2023年後半。それ以前の記録が見つからない。
(Yahoo!知恵袋より)
判定:後付けの可能性が高い 疑惑
疑惑その3:ババ・ヴァンガの「記録なき予言」
ババ・ヴァンガ予言の致命的矛盾
- 死去年:1996年
- 予言の記録方法:口頭のみ(本人による文書記録なし)
- 「2025年7月5日」の初出:不明(検証不可能)
ブルガリアの盲目の予言者ババ・ヴァンガ。的中率85%とも言われる彼女だが、「2025年7月5日」に関する予言の原典が一切確認できない。
ババ・ヴァンガは予言を書き残さず、すべて口頭で語ったとされる。現在流通している「予言」は、生前の彼女から聞いた「誰か」を経由したもので、その真正性を検証する手段がない。
判定:検証不可能(後付けの疑いあり) 不明
検証結果:「7月5日予言」の信憑性ランキング
予言者・情報源 | 初出時期 | 具体的日付の記載 | 信憑性判定 |
---|---|---|---|
たつき諒 | 2021年10月 | 「7月中」(5日ではない) | 原典として確実 |
NASA太陽フレア予測 | 2019年 | 「2025年7月」 | 科学的根拠あり |
ホピ族 | 古来(日付は後付け) | 記載なし | 後付けの疑い濃厚 |
ブンジュ村(SHOGEN) | 2023年9月以降 | 「2025年7月」 | 後付けの可能性高 |
ババ・ヴァンガ | 不明 | 検証不可能 | 検証不可能 |
結論:「7月5日終末論」の正体
調査結果サマリー
- たつき諒が2021年に発表した「2025年7月中の災難」が唯一の確実なソース
- その他の「予言」は時系列から後付けの疑いが濃厚
- 「7月5日」という具体的日付の多くは、たつき諒の「夢を見た日」が誤解されて拡散
- 偶然NASA太陽フレア予測と時期が重なったことで信憑性が増したように見える
メディア・インフルエンサーの責任
今回の調査で明らかになったのは、一つの予言がバズった後に、関連性の薄い情報が次々と「関連予言」として結び付けられていく現象だ。
特に問題なのは:
- YouTuberが検証なしに複数の「予言」を関連付けて拡散
- メディアが時系列を検証せずに「古来からの予言が一致」と報道
- SNSでの情報拡散により、後付け情報が「古くからの予言」として認識される
では、7月5日に何も起こらないのか?
これらの予言の多くが「後付け」だからといって、7月5日前後に何も起こらないとは限らない。太陽フレア極大期という科学的事実は残っており、何らかの影響が出る可能性はある。
重要なのは、科学的事実と「予言」を混同しないことだ。
科学的に検証可能な事実:
- 2025年7月頃の太陽活動極大期(NASA・NOAA予測)
- 太陽フレアによる通信・電力への影響リスク
- 南海トラフ地震の長期的リスク(時期は特定不可能)
検証不可能な「予言」:
- ホピ族の「2025年7月5日」関連予言
- ブンジュ村シャーマンの日本変革予言
- ババ・ヴァンガの具体的日付予言
真の教訓:情報リテラシーの重要性
今回の「7月5日終末論」は、現代のメディア環境における情報の拡散パターンを明確に示している。
情報拡散の典型パターン
- 核となる情報の発表(たつき諒の予言)
- 関連情報の後付け(ホピ族、ブンジュ村など)
- 偶然の一致(太陽フレア予測との時期重複)
- メディア・SNSによる拡散
- 社会現象化(航空便減便、政府対応など)
この現象から学ぶべきは:
- 情報の初出時期を必ず確認する
- 複数の「関連情報」が同時に現れた場合は後付けを疑う
- 「古来からの予言」と称するものは原典を確認する
- 科学的事実と「予言」を明確に分離して考える
最後に:冷静な判断を
7月5日まで残りわずか。この日に何が起こるかは誰にも分からない。しかし、少なくとも言えることは、世界中の古代予言が偶然にもこの日に集中したという話の多くは、事実ではないということだ。
大切なのは、根拠のない恐怖に振り回されることなく、科学的事実に基づいた適切な備えをすることだ。太陽フレアや地震のリスクは現実に存在する。しかし、それは「予言」ではなく「科学的予測」として向き合うべき課題なのである。
メディアやインフルエンサーには、センセーショナルな話題を扱う際の時系列検証と事実確認の責任がある。視聴者・読者も、情報を鵜呑みにせず、批判的思考を持って接することが重要だ。
※この記事は、公開されている情報と資料に基づく調査報告です。記載された予言や情報源に対する評価は、時系列分析と検証可能性に基づくものです。