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地域スーパーが次々と消える 東郷スーパー、ナカケー、スーパー藤原…「値上げしても儲からない」薄利地獄

地域スーパーの破産や事業停止が相次ぐ状況を伝えるニュース風イメージ

全国で地域密着型スーパーの経営破綻が相次いでいる。

2026年10月には鹿児島県の東郷スーパーマーケットが事業を停止し、破産申請の準備に入ったことが判明。近年は兵庫のナカケー、青森のスーパー藤原、ファミリーマートさとうなど、長年地域に根付いてきた食品スーパーの撤退や破綻が続いている。

2026年10月、鹿児島「東郷スーパーマーケット」が事業停止

直近で注目を集めたのが、鹿児島県薩摩川内市東郷町の「東郷スーパーマーケット」だ。

同社は1985年設立。食品スーパー「バリュートーゴー本店」を中心に地域住民の生活を支えてきたほか、仕出し業や「藤川天神峡そうめん流し」の運営受託などにも事業を広げていた。

2000年前後には売上高約12億円を計上していたが、その後は商圏人口の減少やコンビニ出店などで売上が低迷。2025年3月期には約5億8000万円まで縮小したとされる。

さらに2026年9月、近隣に業務スーパーがオープン。顧客流出への懸念が強まり、9月末までに事業を停止して破産申請の準備に入った。負債総額は約3億円とみられている。

創業100年級の兵庫「ナカケー」も自己破産申請準備

兵庫県では、長年食品スーパーを運営してきたナカケーが2026年7月30日までに自己破産申請の準備に入った。

負債総額は約10億2700万円。運営していた3店舗は他社へ譲渡され、営業自体は継続している。

つまり、「会社は破綻しても店舗は残る」という形だ。地域住民から見れば店が突然消える事態は避けられても、旧運営会社としては独力で事業を継続できなかったことになる。

青森「スーパー藤原」はピーク42億円から破産申請へ

2025年2月には、青森市で長年営業してきたスーパー藤原が破産申請の準備に入った。

同社は1940年創業。2009年3月期には売上高約42億円を記録した地域有力スーパーだった。

しかし、その後は同業他社との競争激化で減収が続き、設備投資負担も重荷となった。2024年には人手不足などを背景に本店を閉鎖。さらに仕入価格や光熱費の上昇が追い打ちをかけた。

最終的に市内2店舗の運営事業をマエダへ譲渡し、破産申請の準備へ。負債総額は8億円台が見込まれた。

むつ市「ファミリーマートさとう」も事業停止

同じ青森県では、2025年4月にむつ市の食品スーパー「ファミリーマートさとう」が市内2店舗の事業を停止し、破産手続き開始の申し立て準備に入った。

負債総額は2024年3月期時点で約8億8000万円。同業との競争激化などで売上が減少し、資金繰りが厳しくなったとされる。

茨城「シーズ(旧セイブ)」は負債約40億9700万円

規模の大きい例では、茨城県水戸市のシーズ(旧セイブ)が2025年10月、特別清算開始決定を受けた。

負債総額は約40億9720万円。かつては茨城県央・県北を地盤にチェーン展開していたが、大手スーパーの出店攻勢や同業間競争の激化で業績が伸び悩み、不採算店の閉鎖や業態転換を進めていた。

なお、このケースでは店舗事業は新会社へ移管されており、必ずしも店そのものが一斉閉店したわけではない。

飲食料品小売の倒産は2025年度358件、4年連続増加

地域スーパーだけの問題ではない。帝国データバンクによると、2025年度の「飲食料品小売」の倒産は358件。前年度の321件から11.5%増え、4年連続で増加した。

2000年度以降では、2013年度の375件に次ぐ過去2番目の高水準だ。負債総額も約412億9400万円と、前年度の約281億1700万円から大きく増えた。

さらに、負債5000万円未満の小規模倒産が225件と全体の62.8%を占めている。つまり、いま苦しんでいるのは巨大企業よりも、地域に根差した小規模事業者が中心だ。

なぜ「値上げしても儲からない」のか

スーパーは、もともと利益率が高い商売ではない。

食品は消費者にとって日常的に価格比較される商品であり、少しの値上げでも「高い店」と判断されやすい。にもかかわらず、仕入価格、電気代、物流費、人件費は上がる。

売価へ転嫁しようとすれば客離れが怖い。転嫁しなければ利益が削られる。この板挟みが、地域スーパーを追い込んでいる。

電気代の上昇はスーパーに直撃する

食品スーパーは、一般的な小売店より電力消費が大きい。

冷蔵ケース、冷凍ケース、バックヤードの冷蔵庫・冷凍庫、照明、空調などを長時間稼働させる必要があるからだ。

特に鮮魚、精肉、総菜、冷凍食品を幅広く扱う店ほど、設備を止めることができない。

電気料金が上がっても、その分だけ食品価格を一斉に引き上げることは難しい。結果として、固定費の上昇がそのまま利益を圧迫する。

人手不足と賃上げが同時に襲う

スーパーは人手依存度も高い。

レジ、品出し、総菜調理、精肉加工、鮮魚加工、清掃、発注、バックヤード作業など、多くの人員が必要になる。

ところが地方では働き手そのものが減っている。人を集めるためには時給を上げる必要があり、それでも採用できないことがある。

帝国データバンクの2025年度全体集計でも、「人手不足倒産」は441件と過去最多を更新した。人材確保の難しさは食品小売だけの問題ではないが、営業時間が長く、現場作業が多いスーパーにとって影響は大きい。

ドラッグストアが食品を売る時代

地域スーパーにとって厄介なのが、競争相手が「スーパーだけではない」ことだ。

近年のドラッグストアは、医薬品や日用品だけでなく、牛乳、パン、卵、飲料、冷凍食品、菓子、調味料など食品を大量に扱う。

食品を低価格で集客商品として販売し、利益率の高い医薬品や化粧品で収益を補うビジネスモデルを取れる店も多い。

食品そのもので利益を確保しなければならない地域スーパーにとって、同じ土俵での価格競争は厳しい。

業務スーパーの出店が地域商圏を変える

東郷スーパーマーケットのケースでは、近隣への業務スーパー出店が経営判断に影響したとみられている。

業務スーパーは大容量商品や独自商品、冷凍食品などで価格訴求力が高く、一般家庭の利用も定着している。

人口が増えている都市部なら新規出店によって市場全体が拡大することもあるが、人口が減少している地方では、限られた客を複数店舗で奪い合うことになる。

新しい大型店が1店できただけで、長年営業してきた地場スーパーの売上が大きく落ちることもあり得る。

人口減少は「客が減る」だけではない

地方の人口減少は、単に来店客が減るだけの問題ではない。

働き手も減る。配送効率も悪くなる。高齢化が進めば買い上げ点数や来店頻度も変わる。

さらに、地域全体の人口が縮小しても、店舗の冷蔵設備や建物維持費、固定資産関連費用などは急には減らせない。

売上が10%落ちても固定費が10%下がるわけではないため、利益は売上以上のスピードで悪化しやすい。

「地域密着」が必ずしも武器にならない時代

かつて地域スーパーの強みは、地元客との関係や地域に合わせた品ぞろえだった。

しかし、価格比較が簡単になり、車で郊外の大型店へ移動する消費者も増え、ドラッグストアやディスカウント店でも食品が買えるようになった。

「近いから行く」「昔からあるから行く」だけでは、客をつなぎ止めにくくなっている。

店がなくなると地域住民が困る

地域スーパーの撤退は、企業の倒産だけで終わらない。

高齢者や車を持たない人にとって、徒歩圏の食品スーパーがなくなることは日常生活に直結する。

いわゆる「買い物弱者」の問題だ。

人口が少ない地域ほど店舗経営は難しいのに、その地域ほど一つのスーパーが生活インフラとして重要になるという矛盾がある。

倒産しても店舗が残るケースもある

一方、ナカケーやシーズのように、会社自体は整理されても店舗事業が他社へ引き継がれるケースもある。

これは地域住民にとっては救いだが、裏を返せば「単独では経営を続けられない店舗」が増えているということでもある。

今後は、地場スーパー同士の統合、大手への事業譲渡、共同仕入れ、物流の共通化など、生き残りのための再編がさらに進む可能性がある。

これからさらに淘汰が進む可能性

帝国データバンクは、物価高、人件費上昇、光熱費負担、価格競争が続けば、小規模な飲食料品小売の淘汰が進む可能性を指摘している。

特に厳しいのは、人口減少地域で単独店舗または数店舗を運営する事業者だ。

大手のように大量仕入れで原価を下げることが難しく、広告費やシステム投資にも限界がある。

「安く売る」だけでは生き残れない

これからの地域スーパーには、単なる価格勝負以外の強みが必要になる。

総菜の強化、地元産品の充実、高齢者向け宅配、移動販売、地域限定サービスなど、価格以外の価値をどう作るかが重要になる。

ただし、それらにも人手とコストがかかる。経営余力の少ない企業ほど新しい投資ができず、さらに競争力を失う悪循環に陥る可能性がある。

「スーパー倒産相次ぐ」は一時的な現象ではない

東郷スーパーマーケット、ナカケー、スーパー藤原、ファミリーマートさとう、シーズ。

地域も規模も違うが、共通しているのは、競争激化、コスト上昇、人手不足、商圏縮小という複数の問題が重なっていることだ。

単に経営者の判断ミスだけでは説明できない。

地域スーパーを取り巻く構造そのものが変わっている。

次に消えるのは「近所のいつもの店」かもしれない

大型チェーンやドラッグストアが増える一方で、地元の小さなスーパーが静かに消えていく。

その変化は、都市部では気づきにくい。

しかし地方では、一つの店が閉じるだけで、買い物環境が一気に悪化する地域もある。

「スーパーの倒産」は企業ニュースであると同時に、地域インフラが縮小しているサインでもある。

物価高、人件費高騰、電気代、物流費、人口減少、そして大手との価格競争。これらが同時に続く限り、地域スーパーの淘汰は今後も止まらない可能性が高い。

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