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【神戸24歳女性刺殺】執行猶予中の再犯殺人 - 3年前の『首絞め告白男』が今度は刺殺

2025年8月20日午後7時20分頃、神戸市中央区磯辺通のマンションで起きた事件は、日本の司法制度の根本的な問題を浮き彫りにした。大手損害保険会社に勤める片山恵さん(24歳)が、エレベーター内で刃物により複数回刺され、搬送先の病院で死亡が確認されたのだ。

逮捕されたのは東京都新宿区在住の会社員、谷本将志容疑者(35歳)。しかし、この男の正体を知った時、多くの人が愕然とした。

彼は3年前にも、全く同じ場所で、全く同じ手口で女性を襲っていたのだ。

3年前の異常犯行 - 『首絞め告白男』の正体

2022年5月28日、兵庫県警生田署は当時32歳の谷本容疑者を殺人未遂の疑いで緊急逮捕していた。犯行現場は今回と同じ神戸市中央区。被害者は当時23歳の女性だった。

恐怖の犯行手口

その時の犯行は、今振り返ると今回の事件を予見させるような異常性に満ちていた:

  • 待ち伏せ: 神戸市中央区の女性の自宅マンション前で帰宅を待ち伏せ
  • 押し入り: 帰宅した女性がドアを開けた瞬間に強引に侵入
  • 首絞め: 両手で女性の首を絞める
  • 異常な告白: その後1時間にわたり「自分がどれほど好きか」を語り続ける

被害女性は必死の抵抗で一命を取り留めたが、谷本は最後に「警察には通報しないでね」と言い残して立ち去ったという。

司法の甘い判断

この殺人未遂事件で谷本容疑者は逮捕されたが、最終的に受けた処罰は住居侵入、傷害、ストーカー規制法違反の罪で懲役2年6か月執行猶予5年だった。

つまり、実質的に刑務所に入ることなく社会に戻されていたのである。

今回の計画的犯行 - 50分間の執拗な尾行

周到な準備

今回の事件の計画性の高さは戦慄に値する:

  • 事件の数日前から神戸市中央区のホテルに宿泊
  • 事件当日もホテル宿泊を予約(実際は新幹線で逃亡)
  • 被害者の勤務先近くで物色行為

50分間の恐怖

防犯カメラの解析により、恐ろしい事実が判明した:

谷本容疑者は片山さんが勤務先を出た直後から約50分間にわたって尾行していた

  • 片山さんと同じ阪神電鉄に乗車
  • 神戸三宮駅で一緒に下車
  • その後も後方5〜10メートルを維持して追跡
  • 片山さんがオートロックの扉を開けた瞬間に滑り込み

エレベーター密室の悲劇

午後7時22分、マンションの住人から110番通報が入った。

「エレベーター内で男が女性を羽交い締めにしている」

通報者はエントランスから自室に戻る際、エレベーター内の様子を映したモニターで、男が刃物のようなものを手にしているのを目撃。女性の悲鳴も聞こえたという。

片山さんは6階のエレベーター前で発見され、搬送先で死亡が確認された。死因は失血死。一部の刺し傷は肺にまで達していた。

『真面目な社員』という仮面

勤務先での評価

谷本容疑者が勤務していた東京都新宿区の運送会社で、彼は意外な評価を受けていた:

  • 「リーダーシップもあって、真面目に働いていた」
  • 無遅刻無欠勤で、事故や違反もない模範的な社員
  • 2025年2月にはトラックの運行管理者に打診されるほど評価されていた

隠された過去と借金

しかし、その裏には深刻な問題が隠されていた:

  • 面接時に「犯罪歴はありません」と虚偽申告
  • 約300万円の借金を抱え自己破産を検討
  • 毎月5万円の前借りを続けていた
  • 父親の介護費用と母方祖母の認知症介護

会社の社長は事件後、「まさかこんなことになるとは」と困惑を隠せない様子だった。

谷本将志容疑者の詳細プロフィール

基本情報と生い立ち

氏名谷本将志(たにもと まさし)
年齢35歳(1990年頃生まれ)
出身大阪府
現住所東京都新宿区高田馬場3丁目(社員寮)
職業運送会社ドライバー(酒類配送)
家族構成一人っ子、両親離婚で父親に引き取られる

谷本容疑者の人生は幼少期から不安定なものだった。同級生によると「恵まれない家庭環境」で育ち、「寂しさを抱えながら」成長したという。この孤独感が後の異常な執着行動の根源となった可能性がある。

学歴・職歴の変遷

  • 学歴: 高校中退後、建設現場などを転々
  • 〜2022年: 神戸市内の建設会社(10年以上勤務)
  • 2023年1月: 千葉の会社(短期間)
  • 2023年5月〜: 東京都新宿区の運送会社

上京理由は「悪い友だちと関係を切るため」と説明していたが、実際は2022年の殺人未遂事件を隠すための逃避だった可能性が高い。

深刻な経済状況

谷本容疑者の経済状況は極めて深刻だった:

  • 借金総額: 約300万円
  • 月収: 約30万円(手取り)
  • 毎月の前借り: 5万円
  • 借金理由: 父親の介護費用、母方祖母の認知症介護
  • 破産状況: 自己破産手続きを進行中

父親は認知症で施設入所中、母方祖母も認知症となり、谷本容疑者が介護を担う時期があった。この重圧が事件の遠因となった可能性もある。

職場での『仮面』と実態の乖離

勤務先での谷本容疑者の評価は以下の通りだった:

職場での「仮面」

  • 「リーダーシップがある」
  • 「真面目で熱血漢」
  • 「無遅刻無欠勤」
  • 「事故・違反なし」
  • 「貴重な存在」
  • 運行管理者に昇進打診

隠された実態

  • 犯罪歴を完全隠蔽
  • 「ナゾの虚言グセ」
  • 神戸で「物色」行為
  • 女性への異常な執着
  • 計画的犯行の準備
  • 執行猶予中の再犯

異常な女性観と執着パターン

谷本容疑者の女性に対する態度は極めて特異だった:

  • 日常: 「女性の話さえせえへんやつ」(同僚証言)
  • 恋愛: 「奥手でピュア」「キャバクラにも行かない」
  • 願望: 「いい家庭を持ちたいという気持ちが人一倍強い」
  • 実行: 「神戸の中心街で物色していた」

この矛盾した行動パターンは、正常な人間関係を築けない代償として、一方的な執着と支配欲に転化していたと分析される。

2022年事件の詳細な実態

3年前の殺人未遂事件では、以下の異常行動が記録されている:

  • ストーカー行為: 被害女性のマンション周辺を徘徊
  • 侵入回数: オートロック住宅に5回侵入
  • 盗撮行為: ストーカー行為と併せて盗撮も実行
  • 異常な告白: 首を絞めた後、1時間「好き」を語り続ける
  • 脅迫: 「警察には通報しないでね」と要求

この時点で裁判長は「再犯が強く危惧される」と明言していたにも関わらず、懲役2年6か月執行猶予5年という軽い処分だった。

無差別ストーカーの恐怖

被害者との関係

捜査の結果、衝撃的な事実が判明した:

谷本容疑者と片山さんには全く面識がなかった

谷本容疑者は「全く知らない人です」と供述。これは特定の恋愛関係から生じたストーカー事件ではなく、一方的な執着に基づく「無差別型ストーカー」の典型例だった。

ストーカー規制法の盲点

現行のストーカー規制法は交際経験や明確な恋愛関係を前提とするケースに重点が置かれており、谷本のような「無関係型」には網がかかりにくい構造的問題がある。

2日間の逃走劇と逮捕

計画的逃亡

事件後、谷本容疑者の行動は:

  • 午後8時台に新神戸駅から新幹線で東京方面へ
  • 奥多摩町に潜伏
  • 22日午後、奥多摩駅近くの山道を歩いているところを発見

逮捕時、谷本容疑者はスナック菓子を食べながらさまようように歩き続けていたという。警視庁の捜査員に発見された際は「若干暴れた」と報告されている。

司法制度への疑問と批判

ネット上の怒りの声

事件が報道されると、SNSでは激しい批判が噴出した:

  • 「なんでまた同じ場所で再犯?」
  • 「前科あるのに、なんで野放しだったんだよ…」
  • 「絶対またやるって思った人、いたよね」
  • 「司法の甘さが招いた再犯」
  • 「再犯は死刑でいい」

制度の根本的問題

この事件は複数の制度的問題を露呈した:

  1. 未遂犯への減刑制度が危険人物を短期間で社会に戻してしまう
  2. ストーカー規制法が「無関係型」ストーカーに対応できない
  3. 被害者保護措置が不十分
  4. 執行猶予後の監視・支援体制の不備

遺族の無念のコメント

片山恵さんの遺族は事件後、悲痛なコメントを発表した:

「犯人が逮捕されたと聞き、ひとまず安堵しています。懸命な捜査に感謝いたします。家族一同、悲しみに暮れ、混乱した状態が続いていますが、せめて安らかに送り出したいとの思いでおります。」

結論 - 防げたはずの悲劇

片山恵さんは同僚から「明るく朗らかで、コミュニケーション能力の高い人」と慕われ、事件当夜も上司に業務連絡のチャットを送るなど真面目に仕事に取り組んでいた24歳の若い女性だった。

2022年の段階で谷本容疑者への適切な対応がなされていれば、この尊い命は救われていた可能性が高い。

谷本将志という人物の存在は、個人の狂気を超えて、日本の司法制度・ストーカー対策の脆弱さを浮き彫りにしている。

未遂を軽んじる社会の姿勢を根本的に見直さない限り、同様の悲劇が繰り返される危険性は消えない。


この事件を教訓として、再犯防止策の強化、ストーカー規制法の見直し、被害者保護制度の充実が急務であることは言うまでもない。

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