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マイナ保険証が有効なのに使えない矛盾、電子証明書の期限切れで医療現場混乱、7割の病院でトラブル発生

マイナ保険証

2026年に入り、マイナンバーカード本体は有効なのに、電子証明書の有効期限が切れているため「マイナ保険証として使えない」というトラブルが全国の医療機関で多発している。全国保険医団体連合会(保団連)の調査によると、約7割の医療機関でトラブルが発生しており、有効期限切れの件数は前回調査からほぼ倍増している。保険資格は有効なのに、技術的な理由で医療を受けられない患者が続出しており、制度設計の根本的な欠陥が浮き彫りになっている。

マイナ保険証の有効期限トラブルが急増

2024年10月14日から12月1日にかけて実施された保団連の調査では、全国33都府県の約4万9,000医療機関を対象に、マイナ保険証のトラブル状況を調査した。回答した1万519機関のうち、約7割の医療機関でトラブルが発生していることが判明した。

特に深刻なのが、電子証明書の有効期限切れによるトラブルである。2024年8月から12月1日までの期間で、有効期限切れのトラブルは3,319件に達し、前回調査(2024年10月)からほぼ倍増している。有効期限切れトラブルの割合も、約1年前の20.1%から倍増しており、今後さらに増加することが懸念されている。

医療現場で何が起きているのか

東京新聞の報道によると、患者がマイナ保険証を提示しても「使えない」と言われるケースが続出している。マイナンバーカード本体の有効期限は10年(18歳以上)または5年(18歳未満)であるのに対し、電子証明書の有効期限は年齢に関わらず5年となっている。このため、カード本体は有効でも、電子証明書の期限が先に切れてしまうケースが多発しているのだ。

電子証明書の有効期限が切れると、有効期限満了日が属する月の末日から3ヶ月間は一応使用可能だが、保険資格情報のみ確認可能で、診療情報や薬剤情報などの閲覧はできない。3ヶ月を経過すると、健康保険証としても使えなくなり、再発行手続きが必要となる。

項目 マイナンバーカード本体 電子証明書
有効期限(18歳以上) 発行から10回目の誕生日まで 発行から5回目の誕生日まで
有効期限(18歳未満) 発行から5回目の誕生日まで 発行から5回目の誕生日まで
更新方法 窓口での手続き 窓口での手続き(オンライン不可)

有効期限を設ける意味が不明確

最も批判されているのが、「マイナ保険証自体は有効なのに、電子証明書の期限切れで使えない」という矛盾である。保険資格は有効であり、患者は保険料を支払い続けているにもかかわらず、技術的な理由で医療を受けられないという事態が発生している。

ネット上では「更新忘れたほうを問題視しているが、制度設計の問題」「有効期限を設定する合理的な理由が不明」「高齢者や体の不自由な人にはちっとも優しくないシステム」といった批判が相次いでいる。

デジタル化なのに手間が増える矛盾

地方自治総合研究所特任研究員の今井照氏は、プレジデントオンラインの記事で「マイナンバーカードは、暗証番号の更新のために、少なくとも5年に一回は老若男女を問わずに役所の窓口に出向くことが大きな負担になっている」と指摘している。デジタル化によって、かえって役所に出向く回数が増えるとは、何かが間違っているとしか思えないという。

更新手続きは、有効期限の3ヶ月前から住民票のある市区町村の窓口で可能だが、オンラインのみでは完結しない。高齢者や体の不自由な人、施設入所者などへの配慮が不足しており、利用者目線の制度設計になっていないという批判が強い。

医療機関への負担も深刻

マイナ保険証のトラブルは、医療機関にも大きな負担を強いている。保団連の調査では、以下のようなトラブルが報告されている。

  • 読み取り機の接続不良
  • 資格確認できず「いったん10割負担」を求めるケース
  • 「不詳レセプト」で請求して返戻883件
  • 患者への説明やクレーム対応で薬剤師の8割以上が「負担が増えた」

医療介護CBニュースによると、昨年8月以降、マイナ保険証トラブルで「不詳レセプト」として請求した件数が883件に達している。レセプト返戻による事務負担の増加は、医療機関の経営を圧迫する要因となっている。

今後さらにトラブルが増加する懸念

総務省によると、2025年度の更新必要件数は2,780万件に達する見込みである。従来の保険証は2025年末で事実上廃止されたため、今後さらにトラブルが増加することが懸念されている。

全国保険医団体連合会(保団連)は「今後トラブルがゼロになることはない」と述べ、「保険証を廃止した与党の責任を問いたい」と批判している。弁護士JPニュースでは、医師団体が「紙の保険証」の復活を訴えていることが報じられている。

韓国との比較で浮き彫りになる構造的欠陥

今井照氏は、韓国との比較を通じて、日本のマイナンバーカードの構造的欠陥を指摘している。韓国は、行政のデジタル化などを目的として、戸籍制度を廃止したと伝えられている。それくらい思い切った行政改革をしないと、行政のデジタル化の意義は達成できないという。

日本の場合、最大の問題点は現在の政策や制度をそのままシステム化してしまうことだという。たとえば、日本の社会政策は世帯単位になっているので、そのままではマイナンバーと齟齬が生じる。いくらマイナンバーと個人の預金口座とを紐づけても、世帯単位で給付金を出すことになれば、個人単位でできているマイナンバーをそのままでは使えない。一手間も二手間も増えて、かえって事務は煩雑になり、時間もかかって、ミスも多くなる。

デジタル庁の限界

今井氏は、「本来なら政策執行過程を徹底的に分解したうえで、システム化を進めればよいのだが、大手ITベンダー企業からの出向者が半分を占めるデジタル庁職員に、そのような役割を期待するのは酷であろう」と指摘している。

既存の制度や政策をそのままシステム化しようとしたため、かえって手間が増え、国民と自治体の負担が増加しているのが現状である。

市町村への永続的な負担増

マイナンバーカードの更新事務は、市町村にとっても新たな負担となっている。作業量の増加はもとより、人員や財源の確保が必要になっている。しかもこの事務は導入期の一時的な増加ではなく、現在の制度が続く限り永遠に続く事務量の増加である。

市町村によっては、新しい組織を作り、別に事務所を借りて対応しているところもある。これらを国全体で積み上げたら、相当大きな負担増になっているに違いない。

ネット上で広がる批判の声

Yahoo!ニュースのコメント欄では、マイナンバーカードの有効期限や電子証明書の煩雑さに対する批判が相次いでいる。「利用者目線の制度設計を求める声」が多数寄せられており、以下のような意見が目立つ。

「マイナ保険証は利用者目線からすると目立ったメリットはない」

「なぜマイナンバーカードはこんなにも使えないのか」

「韓国はできたのに日本がデジタル化できない構造的欠陥」

プレジデントオンラインの記事では、「マイナ保険証を使うメリットを感じられない」という声が紹介されている。特例措置や資格証明書の発行など「従来と同じ方法」が温存されたのは、マイナ保険証の使い勝手が悪く、移行がスムーズに進んでいないからだという。

制度設計の根本的な見直しが必要

マイナ保険証の有効期限問題は、単なる技術的なトラブルではなく、制度設計の根本的な欠陥を示している。以下の問題点が指摘されている。

問題点 具体的な内容
有効期限の二重構造 カード本体と電子証明書で異なる有効期限、利用者が理解しにくい
有効期限設定の不合理性 保険資格は有効なのに、技術的な理由で医療を受けられない
利用者目線の欠如 オンラインで完結しない更新手続き、高齢者への配慮不足
医療現場への負担 約7割の医療機関でトラブル発生、レセプト返戻による事務負担増加
紙の保険証廃止の強行 トラブルが多発している中での廃止、資格確認書という代替手段の存在自体が制度の矛盾を示す

東京新聞の社説では、「マイナ保険証と憲法」という観点から、医療を受ける権利が技術的な理由で制限されることの問題性が指摘されている。

まとめ:デジタル化の名の下に増える国民負担

マイナ保険証の有効期限問題は、デジタル化の名の下に、かえって国民と医療機関、自治体の負担が増加している実態を浮き彫りにしている。マイナンバーカード本体は有効なのに、電子証明書の期限切れで医療を受けられないという矛盾は、制度設計の根本的な欠陥を示している。

約7割の医療機関でトラブルが発生し、有効期限切れの件数は前回調査からほぼ倍増している。2025年度の更新必要件数は2,780万件に達する見込みであり、今後さらにトラブルが増加することが懸念されている。

韓国が戸籍制度を廃止してまで行政のデジタル化を進めたのに対し、日本は既存の制度や政策をそのままシステム化しようとしたため、かえって手間が増え、国民と自治体の負担が増加している。デジタル化によって、かえって役所に出向く回数が増えるとは、何かが間違っているとしか思えない。

全国保険医団体連合会が「今後トラブルがゼロになることはない」と述べ、医師団体が「紙の保険証」の復活を訴えている現状は、マイナ保険証の制度設計が利用者目線を欠いていることを示している。有効期限を設定する合理的な理由が不明確であり、保険資格は有効なのに技術的な理由で医療を受けられないという事態は、制度の根本的な見直しが必要であることを示している。

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