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「もうムリだ」退職代行モームリ社長夫婦を逮捕、業界最大手4万人利用の裏で社員が他社の退職代行で逃亡、弁護士法違反の闇

退職代行モームリ社長逮捕

2026年2月3日、退職代行業界に激震が走った。業界最大手として累計4万人の利用者を抱え、「退職代行のいらない社会」を掲げてきた退職代行サービス「モームリ」の運営会社社長・谷本慎二容疑者(37)と妻で従業員の谷本志織容疑者(31)が、弁護士法違反(非弁提携)の疑いで警視庁原宿署に逮捕された。

逮捕容疑は、報酬を得る目的で弁護士に法律事務をあっせんした疑い。特定の弁護士に仕事を流し、その対価として紹介料を得る「送客システム」を組織的に構築していたとされる。しかし、この事件の闇はそれだけではない。「ブラック企業を救う」と気勢を上げていた経営者夫婦の会社で、社員たちが次々と「他社の退職代行」に依頼して逃げ出していたという皮肉な実態が明らかになった。

業界最大手「モームリ」の急成長

退職代行サービス「モームリ」は、株式会社アルバトロスが運営する業界最大手の退職代行サービスである。2023年のサービス開始から3年で累計4万人の利用者を獲得し、従業員数は約50名にまで拡大した。利用者の6割以上が20代という若年層に支持され、「シューイチ」をはじめとする多数の情報番組で取り上げられるなど、メディアの寵児として注目を集めてきた。

谷本慎二社長は、YouTubeやSNSで「ブラック企業を救う」と気勢を上げ、「退職代行のいらない社会」を掲げて対外的な理想を語る広告塔として活動していた。一方、妻の谷本志織容疑者は、バックオフィスを支配し、組織の「締め付け」を実働部隊として担当していた。

弁護士法違反の「送客システム」

警視庁の捜査によると、谷本慎二容疑者と谷本志織容疑者は、退職代行の依頼者を特定の弁護士に紹介し、その対価として「賛助金」名目で紹介料を受け取っていた疑いが持たれている。この「送客システム」は組織的に構築されており、弁護士法が禁じる「非弁提携」に該当する。

弁護士資格を持たない民間業者が情報伝達以上の法的交渉を行った場合、弁護士法違反となる。モームリは、この法的なグレーゾーンを利用し、弁護士に仕事を流すことで利益を得ていたとされる。

項目 内容
逮捕日 2026年2月3日
逮捕者 谷本慎二容疑者(37)、谷本志織容疑者(31)
容疑 弁護士法違反(非弁提携)
会社名 株式会社アルバトロス
サービス名 退職代行モームリ
利用者数 累計4万人
従業員数 約50名

社内の「公開処刑」と恐怖政治

週刊文春の報道(2025年4月16日)によると、モームリの社内では、夫婦による恐怖政治が行われていた。谷本志織容疑者は、従業員の日報を細かく精査し、ミスを見つけては人格を否定するような言葉で問い詰めていたという。

さらに、2週間に一度、全従業員に送られるPDF資料では、個人のミスが一覧となって並び、「問題」とされた社員の名前は赤文字で強調され、衆人環視の中で糾弾される「公開処刑」が行われていた。この社内文化は、まさに谷本社長が糾弾してきた「ブラック企業」そのものだった。

「夫の谷本慎二社長がYouTubeやSNSで『ブラック企業を救う』と気勢を上げる一方、妻の谷本志織容疑者が組織の『締め付け』を実働部隊として担当していた」(週刊文春)

社員が他社の退職代行で辞める皮肉

最も皮肉なのは、モームリの社員でありながら、自社のサービスではなく「他社の退職代行」に依頼して逃げるように辞めていった社員が少なくとも5名以上いたという事実である。自社を全く信用できず、他社に助けを求めなければならないほど、社内は疲弊しきっていた。

「退職代行のいらない社会」を掲げた経営者夫婦の会社で、社員たちが退職代行に頼らざるを得ない状況に追い込まれていたという事実は、モームリのビジネスモデルと社内文化の矛盾を象徴している。

過去の報道から逮捕まで

  • 2025年4月16日: 週刊文春が弁護士からのキックバック疑惑と従業員が次々と逃げ出す内情を報道
  • 2025年10月22日: 弁護士法違反容疑で家宅捜索、押収資料から金流の裏付けを完了
  • 2026年2月3日: 谷本慎二容疑者と谷本志織容疑者を逮捕

退職代行業界の構造的問題

今回の逮捕事件は、退職代行業界全体が抱える構造的な問題を浮き彫りにした。雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏は、Yahoo!ニュースの専門家記事で、退職代行業界の問題点を以下のように指摘している。

1. 非弁行為の蔓延

弁護士資格を持たない民間業者が情報伝達以上の法的交渉を行った場合、弁護士法違反となる。かなり以前から、退職代行業者は違法な「非弁行為」を行っているのではないかとの指摘があった。

2. 円満退社にならない

退職代行では必ずしも円満退社にはならない。部外者からの突然の通知に会社側が激高し、違法行為に及ぶこともある。しかし、多くの退職代行は弁護士ではなく法的な代理人の資格をもたないため、これに対応すると違法行為となる。

3. 利用者を守れない

最終月の賃金不払いや有給消化の拒否など、悪質な違法行為に対し、退職代行が「我慢しろ」と諦めさせようとする場合もみられる。弁護士でなければ利用者を守ることができない。

4. 薄利多売のビジネスモデル

退職代行業者は1人3〜5万円程度で利益を稼ぐビジネスモデルのため、退職先の企業と粘り強く交渉しているようでは割に合わない。民間ではトラブルを想定せず、薄利多売でたくさんの事案を次々に回していくビジネスモデルとなっている。

5. 料金の差と業者数

帝国データバンクの調査によると、弁護士法人による料金は約4万4700円、民間経営による料金は約2万2500円だった。民間経営の方が数が多く、料金は安いが、トラブルへの対応力は低い。

業者タイプ 平均料金 特徴
弁護士法人 約4万4700円 法的トラブルに対応可能
民間経営 約2万2500円 薄利多売、トラブル対応不可

過去に逮捕された退職代行業者

モームリが初めてではない。過去にも退職代行業者が弁護士法違反で逮捕された事例がある。退職代行業界は、法的なグレーゾーンで活動する業者が多く、利用者保護の観点から問題視されてきた。

今野晴貴氏は、「今後も退職支援のニーズ自体は減らないと思われる。この業界がどのような構造を持っているのか解明していく作業が必要だ。社会調査の観点からは、法人形態ごとの『質的調査』を行い、よい事業形態と悪い事業形態について、比較検討をする必要がある」と指摘している。

ネット上の反応

今回の逮捕を受けて、ネット上では様々な反応が見られた。

「退職代行のいらない社会を掲げながら、自社の社員が他社の退職代行で辞めるって、これ以上の皮肉はない」

「ブラック企業を救うと言いながら、自分がブラック企業だったという」

「モームリの社員が他社の退職代行で辞めるって、もう完全にコントだろ」

「退職代行業界全体が闇だと思う。弁護士じゃないのに法的交渉してるんだから」

今後の展開と業界への影響

今回の逮捕により、退職代行業界全体に対する監視の目が厳しくなることが予想される。特に、弁護士資格を持たない民間業者が法的交渉を行っている実態が明らかになれば、業界全体に対する規制強化が進む可能性がある。

また、利用者側も、退職代行サービスを選ぶ際には、弁護士が運営しているかどうか、法的トラブルに対応できるかどうかを慎重に確認する必要がある。安さだけで選ぶと、最終月の賃金不払いや有給消化の拒否など、悪質な違法行為に対応できない可能性がある。

「もうムリだ」の皮肉な結末

「もうムリだ!っと会社で感じたら」というキャッチフレーズで知られたモームリ。しかし、最も「もうムリだ」と感じていたのは、モームリの社員たちだった。「退職代行のいらない社会」を掲げた経営者夫婦。だが、法を軽視した利益至上主義と、社員を恐怖で縛る体質こそが、皮肉にも彼ら自身を「もう無理」な状況へと追い込んだのである。

退職代行業界は今、大きな転換点を迎えている。利用者保護の観点から、業界全体の健全化が求められている。

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