トレンド

「ゾンビたばこ」エトミデートで広島カープ羽月選手起訴、中学生も逮捕 – 「数分で意識が飛ぶ」密売組織は億単位の売上、死亡リスクもある恐ろしい実態

ゾンビタバコ エトミデート

「数分で意識が飛ぶ」「記憶が消える」「手足がしびれてゾンビのように歩く」──中国やカナダの街中で撮影された衝撃的な映像が、日本でも現実のものとなりつつある。俗称「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物「エトミデート」が、若者を中心に急速に蔓延し、広島カープの羽月隆太郎選手(25歳)の逮捕・起訴という衝撃的なニュースで一気に社会問題化した。沖縄県では中学生までもが逮捕され、密売組織は億単位の売り上げを得ていた。覚醒剤や大麻と同様に危険で、死亡リスクもある「ゾンビたばこ」の恐ろしい実態と、相次ぐ逮捕事例を徹底検証する。

「ふらふらと彷徨う姿はまさにゾンビ」中国で撮影された衝撃映像

中国で撮影された映像には、エトミデートを乱用した人たちがふらふらと彷徨っている姿が映し出されている。手足がしびれ、まともに歩くことができず、まさにゾンビのような動きだ。カナダに語学留学していた20代の若者は「街中にはいっぱいやってる人がいてほんとにこんななってた」と証言する。

この異様な光景が、今、日本でも広がりつつある。厚生労働省によると、エトミデートは海外では全身麻酔薬や鎮静剤として医療用に使用される医薬品成分だが、日本では未承認の医薬品だ。乱用すると数分で意識が飛び、その後、けいれんやめまい、手足のしびれなどを引き起こす。

宮崎県警本部組織犯罪対策課の徳永正彦理事官は「死亡例を含む健康被害とか異常行動を引き起こす場合はあって、覚醒剤や大麻と同様に大変危険なものということは承知しています」と警告する。

広島カープ・羽月隆太郎選手(25歳)起訴、トップアスリートにまで広がった衝撃

2026年1月27日、プロ野球広島カープの羽月隆太郎選手(25歳)が医薬品医療機器法違反(指定薬物の使用)容疑で逮捕され、2月17日に起訴された。宮崎市出身のトップアスリートが「ゾンビたばこ」に手を出していたという事実は、社会に大きな衝撃を与えた。

起訴状によると、羽月選手は2025年12月16日ごろ、広島市中区の自宅でエトミデートを加熱して気化させ、吸引して使用したとされる。逮捕直後は「使った覚えはありません」と否認していたが、その後は容疑を認める供述をしていた。

捜査関係者によると、自宅からはエトミデート入りカートリッジが複数見つかっており、使用済みのものもあったという。プロ野球選手という立場にありながら、なぜ「ゾンビたばこ」に手を出してしまったのか。その背景には、電子たばこで吸引できるという手軽さと、抵抗感や警戒感の薄さがあったとみられる。

「吸い過ぎると記憶が飛ぶ」「ふわふわして心地よい」乱用者の証言が示す依存性の高さ

エトミデートを所持したとして2025年9月に起訴された沖縄県うるま市の男(24歳)は、調べに対して「吸い過ぎると何も考えられなくなり、記憶が飛んでしまう」と供述している。

2025年11月19日に那覇地裁沖縄支部で開かれた公判で、検察側が読み上げた供述調書などによると、男は2025年4~5月頃に初めて使用し、「ふわふわして心地よい」と感じたという。その後、過剰摂取するようになり、SNSで密売人を探し、繰り返し購入していた。起訴された分のエトミデートを含む液体(リキッド)約0.3グラムの代金は2万5000円だったという。

この証言が示すのは、エトミデートの依存性の高さだ。最初は「心地よい」と感じても、すぐに過剰摂取するようになり、記憶が飛ぶほどの量を使用してしまう。横浜薬科大客員教授の篠塚達雄氏は「エトミデートは依存性が高いため、摂取量が多くなって死亡するリスクもある」と警告する。

沖縄で中学生までもが逮捕、10代~20代が9割を占める若者への蔓延

エトミデートの蔓延が最も深刻なのは沖縄県だ。2025年5月に指定薬物として規制されて以降、沖縄県警は11月末までに10人を摘発しており、都道府県別で最多となっている。しかも、そのうち9人が10歳代~20歳代を占め、中には高校生も含まれるという。

さらに衝撃的なのは、2026年1月に沖縄県内で中学生の逮捕が相次いで発覚したことだ。エトミデートや大麻の所持・使用疑いで中学生が逮捕されたことを受け、半嶺満県教育長は「大きな衝撃を受けている」とコメントした。

逮捕者の話などから、沖縄県警は2024年秋頃から若者らの間で流通し始めたとみている。沖縄県警が初めてエトミデートを押収したのは2025年2月で、職務質問・所持品検査した人物から確認された。その後、交通事故や暴行事件で関係者の使用が相次いで判明したが、当時は直接取り締まる法律がなかった。

事態を重く見た厚生労働省は2025年5月、エトミデートを指定薬物として規制し、使用や所持、輸入などを原則禁止した。しかし、規制後も若者への蔓延は止まらず、全国各地で摘発が相次いでいる。

密売組織トップ(21歳)逮捕、億単位の売り上げを得ていた「トクリュウ」の実態

沖縄県での「ゾンビたばこ」流通の背後には、巨大な密売組織の存在があった。2025年3月、沖縄県浦添市内の閑静な住宅街にある一軒家を県警の捜査員が捜索すると、部屋に無造作に置かれたカートリッジ約30本が見つかった。その後の捜査で、カートリッジにはエトミデートを含む液体計約63グラムが入っていたことが確認された。

住人は、医薬品医療機器法違反(販売目的貯蔵)で2025年11月に起訴された密売組織トップの被告(21歳)だ。組織は、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)で、密売人最大約100人が所属していた。エトミデートなどの違法薬物を取り扱い、口コミやX(旧ツイッター)で客を募り、秘匿性が高い通信アプリ「シグナル」や「テレグラム」に誘導してやりとりしていたという。

捜査関係者によると、密売価格はカートリッジ1本1万5000円~3万円程度。被告は逮捕前、高級車を乗り回し、派手な生活を送っていた。県警の調べに対し、組織のトップであることは認めているものの、それ以外はほとんど供述していないという。

県警は、沖縄県内で流通しているエトミデートの大半をこの組織が握り、違法薬物の密売で億単位の売り上げを得ていたとみている。わずか21歳の若者が、億単位の売り上げを得る密売組織のトップとして君臨していた事実は、「ゾンビたばこ」がいかに巨大なビジネスになっているかを物語っている。

インドから密輸、タイから密輸、全国各地に広がる密輸ルート

エトミデートを巡っては、密輸グループの摘発も相次いでいる。九州厚生局麻薬取締部と大分県警は2025年8~9月、インドから7月にエトミデートの粉末約100グラムを密輸したとして、中国籍の男3人(22~28歳)を医薬品医療機器法違反容疑で逮捕し、その後、起訴された。うち1人は大分地裁で2025年12月19日に執行猶予付き有罪判決を受けた。

公判では、検察側は冒頭陳述で、3人は海外の薬品会社から約13万円で購入していたと主張している。捜査関係者は「事件は氷山の一角で全国各地に密輸されている可能性がある」と危機感を募らせる。

また、2025年11月25日には、タイ人女性(31歳)がエトミデート(「ゾンビたばこ」)を日本に密輸した疑いで逮捕された。インドから、タイから、そして中国から──エトミデートは様々なルートで日本に密輸され、全国各地に広がっている。

全国で27人検挙、東京・福岡・三重など各地で摘発相次ぐ

エトミデートの摘発は、沖縄だけではない。警察庁によると、規制開始の2025年5月以降、10月末までに摘発者は18人に上る。さらに、2025年5月から12月までには27人が検挙されており、東京、福岡、三重など各地で摘発が相次いでいる。

2026年2月5日には、沖縄県浦添市の男性(19歳)が医薬品医療機器法違反(指定薬物の所持)の疑いで再逮捕された。自宅で「エトミデート」含む"ゾンビたばこ"が見つかったという。

宮崎県内ではこれまで逮捕者は出ていないが、宮崎県警は「検挙が他県等であっていることは事実なのでそういった可能性(県内での検挙)は考えられますよね」として、県内への流入も懸念している。

「電子タバコで吸引できるので抵抗感が薄い」ファッション感覚で広がる危険性

なぜ「ゾンビたばこ」は若者の間で急速に広がっているのか。横浜薬科大客員教授の篠塚達雄氏は「電子タバコで吸引できるので、抵抗感や警戒感が薄く、ファッション感覚などで安易に乱用する若者らの間で広がる可能性もある」と指摘する。

実際、街の若者に聞くと、エトミデートの存在を知っている人は少なくない。30代の男性は「詳しくは知らないんですけどインスタとかで(動画を)見たことがあります」と話し、10代の学生は「(エトミデートは)授業で習いました。中毒性があるみたいな聞いたから怖いなって恐ろしい」と答えた。

覚醒剤や大麻と違い、電子たばこで吸引できるという手軽さが、若者の警戒心を緩めている。リキッド状で販売され、カートリッジに入っているため、見た目は普通の電子たばこと変わらない。この「手軽さ」が、若者を「ゾンビたばこ」の世界に引き込んでいる。

SNSで密売人を探し、秘匿アプリでやりとり、巧妙化する密売手口

「ゾンビたばこ」の密売手口も巧妙化している。沖縄県の密売組織は、口コミやX(旧ツイッター)で客を募り、秘匿性が高い通信アプリ「シグナル」や「テレグラム」に誘導してやりとりしていた。

沖縄県うるま市の男(24歳)も、SNSで密売人を探し、繰り返し購入していた。リキッド約0.3グラムの代金は2万5000円と高額だが、「ふわふわして心地よい」という快楽を求めて、若者は高額な代金を支払ってしまう。

カートリッジ1本の密売価格は1万5000円~3万円程度で、密売組織は莫大な利益を得ている。インドから密輸された粉末約100グラムの購入価格は約13万円だったが、これをリキッドに加工してカートリッジで販売すれば、数百万円の利益を得ることができる。

「覚醒剤や大麻と同様に危険」死亡リスクもある恐ろしい実態

エトミデートの危険性は、覚醒剤や大麻と同等だ。厚生労働省によると、エトミデートは中枢神経の興奮や抑制、または幻覚の作用を有する蓋然性が高く、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生する恐れがあるとして、指定薬物に指定されている。

乱用すると数分で意識が飛び、その後、けいれんやめまい、手足のしびれなどを引き起こす。過剰摂取すると意識を失ったり、手足がけいれんしたりする恐れがあり、死亡例も報告されている。

横浜薬科大客員教授の篠塚達雄氏は「エトミデートは依存性が高いため、摂取量が多くなって死亡するリスクもある」と警告する。「ふわふわして心地よい」という快楽の裏には、死亡リスクという恐ろしい現実が潜んでいる。

「絶対に興味本位で手を出さないで」警察が呼びかけ、啓発と取り締まり強化へ

宮崎県警本部組織犯罪対策課の徳永正彦理事官は「その使用はそれなりの知識がある人使わなきゃいけないものですし、また規制もあるので絶対に興味本位で手を出さないようにしていただきたいと思います」と呼びかける。

県警では、エトミデートを含めた違法薬物の情報を聞いたり見たりした場合は、些細なことでも警察に相談・情報提供してほしいと呼びかけている。横浜薬科大客員教授の篠塚達雄氏も「啓発と取り締まりを強化すべきだ」と訴える。

広島カープの羽月隆太郎選手の逮捕・起訴、沖縄での中学生の逮捕、密売組織トップの摘発、そして全国各地での摘発の相次ぎ──「ゾンビたばこ」は今、日本社会に深刻な脅威を与えている。電子たばこで吸引できるという手軽さが、若者の警戒心を緩め、ファッション感覚で広がっている。しかし、その裏には、覚醒剤や大麻と同様の危険性と、死亡リスクという恐ろしい現実が潜んでいる。

「数分で意識が飛ぶ」「記憶が消える」「手足がしびれてゾンビのように歩く」──この恐ろしい薬物に、絶対に手を出してはいけない。

-トレンド