
甲子園出場11回を誇る山形県の名門・酒田南高校野球部で、部員が別の部員に暴力を振るう動画がSNSに投稿され、大きな波紋を広げている。2025年10月に投稿された動画には、部員を蹴り飛ばす様子や裸で連れ回す様子が映っており、いじめの実態が白日の下に晒された。学校は監督と部長を解任したものの、2026年2月に動画が再拡散され、被害者が退学に追い込まれたとの主張も浮上。過去にも繰り返されてきた暴力問題に、なぜ学校は歯止めをかけられなかったのか。名門野球部の闇を徹底検証する。
SNSに投稿された4本の衝撃動画、「衆人環視」の中で繰り広げられた暴力
2025年10月7日、X(旧Twitter)に酒田南高校野球部の部員が別の部員に暴力を振るう動画が投稿された。動画は合わせて4本で、その内容は目を覆いたくなるほど悪質だった。部員が何人もいる「衆人環視」の部屋の中で、1人の部員が目の前に座っていた別の部員を思い切り蹴り飛ばす瞬間。カーテンのようなものがかかっている暗い部屋の壁際で、1人の部員が別の部員を蹴り上げる様子。さらに、男子部員を裸で連れ回す様子まで映っていた。
動画は2025年夏頃に野球部の寮の中で撮影されたとみられている。複数の部員が見ている前で暴力が行われていたことから、いじめが日常的に行われていた可能性が高い。学校はSNSの運営者に動画の削除を依頼し、現在は閲覧できない状態になっているが、一度拡散された動画は完全には消えない。インターネット上には今も動画のスクリーンショットや証拠が残り続けている。
学校は9月下旬に把握も隠蔽か、動画投稿で発覚した組織的隠蔽の疑い
学校の対応にも疑問が残る。酒田南高校によると、今回の暴力行為については2025年9月下旬に野球部員からの報告を受けて把握し、聞き取り調査を進めていたという。しかし、動画が投稿されたのは10月7日。学校が把握してから2週間以上が経過していた。この間、学校は何をしていたのか。内々に処理しようとしていたのではないかとの疑念が拭えない。
動画の投稿を受け、学校は野球部の活動を自粛させ、県教育委員会と県高校野球連盟に状況を報告。酒田警察署にも相談したという。10月10日にはホームページ上で事態を謝罪したが、その内容は極めて簡潔で、具体的な暴力の内容や被害者の状況、加害者への処分については一切触れられていなかった。
調査結果は「部員1人が別の部員1人を蹴った」のみ、動画との矛盾に疑問の声
2025年12月24日、学校は調査の結果を発表し、野球部の監督と部長(責任教師)を12月末で解任することを決定した。しかし、調査結果の内容は驚くべきものだった。学校によると、10月にX(旧Twitter)に投稿された動画について関係者に聞き取りをしたところ、「部員1人が別の部員1人を蹴っていたことを確認した」という。ほかの暴力行為はなく、被害を受けた部員に大きなけがはなかったという。
しかし、この調査結果は動画の内容と明らかに矛盾している。動画には複数の暴力シーンが映っており、部員を裸で連れ回す様子まで記録されていた。「部員1人が別の部員1人を蹴った」だけで済む話ではない。学校は本当に真剣に調査したのか。それとも、事態を矮小化しようとしているのか。疑問は尽きない。
2026年2月に動画が再拡散、「被害者が退学に追い込まれた」との主張が浮上
事態はさらに悪化した。2026年2月、過去のいじめ疑惑動画がXで再拡散され、Xのトレンドに「酒田南高校野球部、いじめ疑惑動画再拡散で被害者退学主張」が登場した。再拡散された動画には、被害者が全裸で連れ回されたり、首輪をつけられたりする様子が映っていたという。さらに、被害者が動画投稿をきっかけに退学に追い込まれたとの主張が相次いだ。
もし被害者が退学に追い込まれたのが事実であれば、これは二次被害に他ならない。いじめの被害者が学校を去り、加害者が残るという構図は、学校がいじめを容認していると言われても仕方がない。学校は被害者の保護を最優先すべきだったはずだが、現実には被害者が追い詰められていた可能性がある。
過去にも繰り返された暴力問題、2009年から続く不祥事の歴史
酒田南高校野球部は、過去にも何度も暴力問題を起こしている。2009年には部員の飲酒問題で日本学生野球協会から「警告」処分を受けた。2018年には寮内の集団暴行で「対外試合禁止」処分、2022年には喫煙問題で再び「対外試合禁止」処分を受けている。つまり、今回の暴力問題は突発的なものではなく、長年にわたって繰り返されてきた構造的な問題なのだ。
2018年の集団暴行事件を受け、学校はアンケート調査を導入したという。しかし、それでも暴力は止まらなかった。アンケート調査は形だけで、実効性のある再発防止策は講じられていなかったのではないか。学校は過去の教訓を全く活かせていない。
甲子園出場11回の名門、「勝利至上主義」が生んだ暴力の連鎖
酒田南高校野球部は、春と夏の甲子園の大会に合わせて11回の出場を誇る強豪校だ。しかし、その輝かしい実績の裏側には、暴力の連鎖が隠されていた。名門野球部では、上下関係が厳しく、先輩が後輩に暴力を振るうことが「伝統」として受け継がれることがある。勝利至上主義の中で、暴力が「指導」や「しごき」として正当化され、誰も止められなくなる。
酒田南高校野球部も、そうした負の連鎖に陥っていたのではないか。監督や部長は暴力の存在を知っていたはずだが、見て見ぬふりをしていた可能性がある。勝つためには多少の暴力は仕方がない、という考えが蔓延していたのかもしれない。しかし、その代償はあまりにも大きい。
監督と部長を解任も「トカゲの尻尾切り」か、学校の責任は重大
学校は監督と部長を解任したが、これで問題が解決するわけではない。監督と部長だけに責任を押し付ける「トカゲの尻尾切り」ではないかとの批判も出ている。学校全体として、なぜ暴力を防げなかったのか。過去の不祥事から何を学び、どのような再発防止策を講じてきたのか。学校は説明責任を果たすべきだ。
また、県教育委員会や県高校野球連盟の対応も問われる。県高野連はYBCの取材に対し「詳しいことがわかっていないのでコメントは控える」としているが、これでは無責任すぎる。学校任せにせず、第三者委員会を設置して徹底的に調査すべきではないか。
被害者の心の傷は一生消えない、加害者への厳正な処分を
いじめの被害者が受けた心の傷は、一生消えることはない。暴力を振るわれ、裸で連れ回され、その様子を動画に撮られてSNSに晒される。これ以上の屈辱があるだろうか。被害者は今も苦しみ続けているはずだ。もし退学に追い込まれたのが事実であれば、その苦しみはさらに深い。
加害者には厳正な処分が必要だ。暴力を振るった部員は、刑事責任を問われるべきではないか。動画を撮影し、SNSに投稿した部員も同罪だ。学校は加害者を守るのではなく、被害者を守るべきだ。そして、被害者が安心して学校生活を送れるよう、全力でサポートすべきだ。
名門野球部の闇、スポーツ界全体に問われる暴力根絶への覚悟
酒田南高校野球部のいじめ問題は、スポーツ界全体に突きつけられた課題だ。勝利至上主義、上下関係の厳しさ、暴力の正当化。これらはスポーツ界に根深く残る問題であり、酒田南高校だけの問題ではない。全国の学校、スポーツ団体が、この問題を自分事として受け止め、暴力根絶に向けた取り組みを強化すべきだ。
暴力は指導ではない。しごきでもない。犯罪だ。スポーツは本来、人間を成長させ、社会に貢献する人材を育てるためのものだ。暴力が蔓延するスポーツ界に、未来はない。酒田南高校野球部のいじめ問題を教訓に、スポーツ界全体が変わらなければならない。
再発防止に向けて、学校と社会が取り組むべきこと
酒田南高校は、今回の問題を真摯に受け止め、再発防止に全力で取り組むべきだ。具体的には、第三者委員会による徹底的な調査、被害者への謝罪と補償、加害者への厳正な処分、全部員への暴力根絶教育、監視体制の強化などが必要だ。また、学校全体として、いじめや暴力を許さない文化を醸成すべきだ。
社会全体としても、スポーツ界の暴力問題に目を向ける必要がある。メディアは問題を報じ続け、世論を喚起すべきだ。保護者は子どもの様子に注意を払い、異変があれば学校に相談すべきだ。そして、私たち一人ひとりが、暴力を許さない社会を作るために声を上げるべきだ。
酒田南高校野球部いじめ問題が問いかけるもの
酒田南高校野球部のいじめ問題は、私たちに多くのことを問いかけている。勝利至上主義の是非、スポーツにおける暴力の根絶、学校の責任、被害者の保護、加害者への処分、そして社会全体の意識改革。これらの問題に真剣に向き合わなければ、同じような悲劇が繰り返されるだろう。
甲子園出場11回の名門野球部で起きたいじめ問題。その闇は深く、根は深い。しかし、この問題を乗り越えることができれば、スポーツ界は大きく変わることができる。酒田南高校野球部のいじめ問題を、決して忘れてはならない。そして、二度と同じような悲劇を繰り返さないために、私たち一人ひとりが行動を起こすべきだ。