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航空自衛隊T4練習機墜落事故 - 愛知県犬山市入鹿池の詳細レポート

2025年5月14日に愛知県犬山市の入鹿池で発生した航空自衛隊T4練習機墜落事故について、事故発生状況、捜索活動、機体情報など最新情報をお届けします

事故発生の概要

2025年5月14日午後3時過ぎ、愛知県犬山市の入鹿池において航空自衛隊のT4練習機1機が墜落する事故が発生しました。同日午後3時6分に愛知県小牧基地を離陸した直後の出来事です。

事故機は小牧基地から北東に約13キロメートル離れた入鹿池上空を飛行中、離陸からわずか2分後の午後3時8分頃にレーダーから航跡が消失しました。周辺住民からは「飛行機のようなものが池に落ちた」「ジェット機が墜落した」などの通報が警察や消防に多数寄せられました。

この事故を受けて、航空自衛隊は同型機の飛行を一時見合わせる措置を取り、防衛省は事故調査委員会を設置して原因究明に乗り出しています。

機体と搭乗者情報

T4練習機について

墜落したのは航空自衛隊のT4練習機(通称「ドルフィン」)です。T4は川崎重工業が開発した純国産の中等練習機で、プロペラ機による初等訓練を終えた自衛隊パイロットが操縦技術を磨くために使用する2人乗りのジェット機です。

2基のエンジンを搭載

全長約13メートル、最大速度はマッハ約0.9

航続距離は約1,300キロメートル

高い運動性と安定性を備えている

ブルーインパルスのアクロバット飛行でも使用される機体

今回墜落した機体は宮崎県の新田原基地所属で、小牧基地に修理のために飛来していたF15戦闘機に随伴するために来ていたとされています。事故当時は「要務飛行」として、小牧基地から新田原基地へ戻る途中でした。

搭乗者について

機体には2人の隊員が搭乗していました:

男性の1等空尉(飛行時間約1,170時間)

男性の2等空尉(飛行時間約480時間)

両搭乗者ともT4練習機の操縦資格を持っていましたが、事故時にどちらが操縦していたかは確認中です。飛行前の点検では機体に異常は確認されていなかったとされています。

事故発生時の状況

天候と飛行状況

事故当時、現場周辺の天気は晴れで、強い風は吹いておらず、気温は26度前後と穏やかな気象条件でした。飛行前の機体点検でも異常は報告されていませんでした。

目撃情報

複数の目撃者によると、機体は墜落直前、異常な挙動を示していたようです。目撃者の証言では:

機体が上空で上下逆さまの状態になった

頭を下にして回転しながら落ちていった

クルクル回りながら頭から突っ込んだ

人のいる場所を避けるように落ちていった

低空飛行していた

一瞬アクロバット飛行のように見えた

特に注目されるのは、「人のいる場所を避けるように落ちていった」という証言です。これはパイロットが最後まで民間人の安全を確保しようとした可能性を示唆しています。

墜落時の音と池の状況

墜落時には様々な音が周辺で聞かれました:

「ざばんっ」と水面に機体がたたきつけられるような大きな音

「ゴォォー」という音

「ドーン」という爆発音

「ドカンドカンと2回」という音

「耳をふさぐくらい大きな音」

「落雷のようなすごく大きな音」

「ボンと音」

「バリバリバキバキ」という大きな音

墜落後、入鹿池では以下のような状況が確認されています:

水面に水柱が上がった

機体の一部のようなものが水しぶきと共に舞い上がった

粉々になった機体の一部や破片が見えた

水面には油のようなものが浮いている

池の中央付近で気泡が観測された

ガソリンのような臭いが漂った

これらの情報から、機体は水中に沈んでいる可能性が高いとみられています。

捜索活動と現在の状況

捜索体制

事故発生を受け、警察、消防、自衛隊が合同で捜索活動を展開しています:

自衛隊ヘリ2機による上空からの捜索

ボートによる水上捜索

ドローンによる上空確認

水中ドローンでの映像確認

潜水士による水中捜索

愛知県警は県警本部に30人態勢の「総合警備本部」を設置し、情報収集などにあたっています。捜索は夜通し続けられ、翌日からも継続される予定です。

発見物と捜索状況

現場付近からは以下のものが発見されています:

機体の一部

機体の残骸

救命装備品

ヘルメット

帽子

しかし、5月14日午後8時時点で、搭乗していた2名の隊員はまだ発見されておらず、安否は不明のままです。機体は池の北西付近に沈んでいるとみられています。

周辺への影響

住民と観光施設への影響

現場周辺でけがをした人はいないと報告されています。池に隣接する博物館「明治村」でも、客や建物に被害はありませんでした。

しかし、周辺住民の間では安全への不安が広がっており:

小学校や観光施設(明治村)では一時的に屋外活動の中止措置

明治村は翌日(5月15日)の休園を決定

池の周囲の道路は通行規制

なお、事故当時、入鹿池で貸ボートを利用していた客は全員無事に戻ってきたことが確認されています。

事故原因に関する調査

現時点での情報

事故原因は現時点では明らかになっていません。考えられる原因として:

機体の異常やシステム不具合

エンジン不具合(専門家からはこの可能性が一番高いという指摘も)

パイロットが人のいる場所を避けて池を選んで墜落した可能性

防衛省は航空自衛隊に事故調査委員会を設置し、原因などを調査しています。ただし、墜落した機体にはフライトレコーダーやボイスレコーダーは搭載されていなかったため、原因究明には時間がかかる可能性があります。

過去の自衛隊機事故

T4練習機の過去の事故

T4練習機は過去にも墜落事故を起こしています:

1991年3月
浜松基地所属機が訓練中に墜落し2人死亡
2000年7月
松島基地所属のブルーインパルス2機が訓練中に牡鹿半島の山に墜落し3人死亡(ブルーインパルス牡鹿半島墜落事故)
2019年4月
T4のエンジンの不具合により飛行が見合わせられる事例も
近年の自衛隊機事故

自衛隊機全体でも近年事故が相次いでおり:

海上自衛隊の哨戒ヘリの事故

陸上自衛隊のヘリの事故

航空自衛隊のF15戦闘機やF35戦闘機などの墜落事故

入鹿池と周辺地域について

入鹿池は愛知県犬山市にある農業用のため池で、観光地としても知られています。博物館「明治村」の隣に位置し、釣りやボート遊びなどが楽しめる場所です。2015年には世界かんがい施設遺産に登録されています。

住民の証言によると、池の上空は日常的に自衛隊機の飛行ルートになっているとのことです。

関係機関・関係者の対応

官房長官:事故発生の確認、詳細な状況把握や搭乗員の救助、周辺被害確認、関係自治体への情報提供を指示

防衛大臣:捜索・救助活動の指示、事故原因究明への取り組み

航空自衛隊幕僚長:事故について陳謝、他のT4練習機の飛行を見合わせることを発表

愛知県警:総合警備本部を設置して捜索活動を展開

今後の課題

搭乗している隊員2人の安否確認と捜索活動の継続

事故原因の早期かつ詳細な解明

安全対策の強化

地域住民の空の安全への不安への対応

飛行訓練の必要性と生活圏の安全の両立に関する議論

防衛省からの迅速かつ丁寧な情報公開と説明責任

今回の事故を教訓に、自衛隊機の運用における安全性向上と地域住民の安全確保の両立が求められています。事故の全容解明と再発防止策の徹底が望まれます。

(本記事は2025年5月14日時点の情報に基づいています。状況によって内容が更新される場合があります)

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